第1459回
「匿名」発言禁止令発令!

私は「匿名」というのがあまり好きではありません。

確かに「匿名」で文章を書くことにより、
自らの社会的な肩書きに縛られずに
思ったことを自由に言えるようになりますので、
発言の自由度は増します。
しかし、逆に言えば、自分の身元が分かると困るようなことや、
相手に面と向かっては言えないようなことも
好き勝手に書くことができます。

そうした「匿名」で書かれた文章が
全て建設的なものであればよいのですが、
中には自分はいざとなればいつでも逃げられる
安全な高台にいるのをよいことに、
津波に飲まれながらも懸命に実名で戦っている人たちに
石を投げつけるような文章もあるようです。
私はそうした行為はとても卑怯で卑劣だと思います。

しかし、中国のような独裁国家では、
「匿名」で発言する
網民(わんみん、ネット市民)たちの気持ちも
わからないでもありません。
なぜなら、身元が明らかな状態で発言をすると、
発言の内容によっては、
政府に命を狙われる可能性さえあるからです。

そうした匿名性のおかげもあって、
網民の意見は今や中国政府をも動かし、
「ネット民主主義」とも言える、
新しい民主主義の形を模索するまでに至りました。
しかし、中国政府は最近、
微博(うぇいぼー、マイクロブログ)の利用者に
実名での登録を義務付け、
「匿名」での発言を許さない政策を打ち出しました。

この政策は北京、天津、広州、深セン、上海など、
主要な大都市で既に施行されています。
具体的には微博を作成したり、
情報を発信したりする場合には、
あらかじめ微博の運営会社に対して
実名で登録しなければならない、というものです。
但し、微博を見るだけならば登録は不要ですし、
情報発信する場合も、画面に表示される発信者の名前は、
実名ではなくハンドルネームを使うことができるそうです。

中国政府は「インターネットを利用した
詐欺行為やデマなどを防止するのが目的である」としていますが、
本当の目的が反政府活動の抑止であることは明らかです。
今まで、身元が明らかにならないのをよいことに、
微博で好き放題に政府批判を繰り返してきたような人たちは、
今後は中国政府に身元を突き止められてしまうことを恐れて、
おとなしくなってしまうことが予想されます。

今回の微博の実名登録制度導入は、
最近「ネット民主主義」に押されっぱなしだった中国政府が、
今後、情報統制で押し返すための、
反攻ののろしなのかもしれません。





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2012年2月8日(水)

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