第1458回
春節聯歓晩会のコントに盗作疑惑
春節聯歓晩会(ちゅんじえりぇんほぁんわんほい)。
このテレビ番組は、
中国の国営放送・中国中央電視台で
毎年、旧暦の徐夕(ちゅうしー、大晦日)の
夜8時から始まる年越し番組で、
歌やマジック、コントなどが中国全土に生中継されます。
視聴者は7億人と言われ、日本のNHK紅白歌合戦同様、
「これを見ないと、年を越した気がしない」という
中国の人たちも多いのではないでしょうか。
その7億人が見ている春節聯歓晩会で、
盗作疑惑が持ち上がりました。
今年のこの番組で
中国の人気コメディアン・郭冬臨率いる4人組が
「面試(みぇんしー、面接)」というコントを披露したのですが、
放送後、網民(わんみん、ネット市民)たちが
「これは日本の人気お笑いコンビ・アンジャッシュの
「バイトの面接」の盗作ではないか」と騒ぎ始めたのです。
そこで私も早速、
中国の動画投稿サイト・優酷(よーくー)で
両方のコントを見比べてみました。
確かに、「面試」(※1)には「バイトの面接」(※2)にはない
オリジナルなネタも入ってはいます。
しかし、スーパーの店長がバイトの面接に来た人を
万引き犯と間違えてちぐはぐな会話を重ねる設定や、
面接に来た人が
「他の店で5年間やってました」とか
「履歴書も持ってきました」などと言ったところに、
万引き犯だと勘違いしている店長が突っ込むネタは
全くそのままです。
「面試」を作った人が「バイトの面接」を見て
それを土台に脚本を書いたのは誰の目にも明らかです。
中国のお笑いは
相声(しゃんしょん、漫才)も小品(しゃおぴん、コント)も、
一生懸命やっているお笑い芸人の方々には申し訳ありませんが、
日本のそれと比べるとあまりレベルが高いとは言えません。
笑いのツボが違う、ということもあるのかもしれませんが、
それを見ている人たちも、
私個人的にはさほどおもしろいとも思えないネタに
大笑いをしています。
中国の国内線の機内では、
なぜかイギリスのコメディ・
豆子先生(どうずしぇんしょん、Mr.Bean)(※3)が
よく放映されるのですが、
それを見て周りの乗客のみなさんが
声を上げて笑っているのを見ると、
正直「あー、これで大笑いできるんだぁ」と思ってしまいます。
しかし、だからと言って、
日本のお笑い芸人が一生懸命考えたオリジナルのネタを
盗んでよい理由にはなりません。
インターネットがなかった昔ならば、
春節聯歓晩会で外国のお笑い芸人のネタを勝手にやっても
誰も気づかなかったかもしれませんが、
良いことか悪いことかは別にして、
今や中国の動画投稿サイトでは日本のお笑いネタが
全て中国語字幕付きで見られますので、
ネタを盗めばすぐに5億人の網民のチェックが入ります。
お笑いネタに限らず、デザインでもサービスでも、
外国のマネばかりしていると、追いつくのは早いですが、
いつまで経っても追い越すことはできません。
クリエイティビティー。
この言葉が中国が今後、
本当の意味での発展をできるかどうかの、
重要なキーワードになるのではないか、
と私は思います。
<コント比較>
※1 「面試」(郭冬臨率いる4人組):
http://v.youku.com/v_show/id_XMzQ1MzQxMzMy.html
※2 「バイトの面接」(アンジャッシュ):
http://v.youku.com/v_show/id_XMzQ1NTUzOTY4.html
※3 豆子先生(Mr.Bean):
http://v.youku.com/v_show/id_XMTE1MzMzMjcy.html
|