第1410回
日中のパブリック・ディプロマシーの差

日本は中国に対して、
相手国の政府ではなく、相手国の国民に直接働きかけていく
という外交活動である「パブリック・ディプロマシー」を
積極的に使っているとは言い難い状態です。

しかし、中国の著作権侵害放置政策により、
図らずも棚からぼた餅的に
パブリック・ディプロマシーが行われ、
結果的に、日本人でさえ知らない日本のアニメを
中国人高校生が知っている、という状態に至っています。

2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件から既に1年が経ち、
中国の人たちの対日感情が急速に良くなってきているのに対し、
日本人の対中感情はいつまで経っても悪いままなのは、
様々な理由があるとは思いますが、その根底には
このパブリック・ディプロマシーの差があると私は思います。

いつも日本のアニメを見て、日本の文化を理解し、
日本に親しみを持っている人が多い中国に対し、
日常生活ではほとんど中国のアニメやドラマに
接する機会がない日本人にとっての中国は、
全く理解が不可能な、疎遠で邪悪な存在でしかないのです。

パブリック・ディプロマシーは究極的には洗脳ですので、
危険な香りがしないではないですが、
共産主義国家のプロパガンダとは違って、
良いイメージばかりを刷り込もうとするわけではありません。
そうした国家の意図が透けて見えるものに対しては
相手国の国民も拒絶反応を示すでしょうから、
各国国民の相互理解による平和な世界を創造する
という意味においては、
各国が積極的に行うべきものなのではないかと思います。

では、中国は何を使って日本に対して
パブリック・ディプロマシーを行えば良いのか?

中国の代表的なアニメと言えば
「喜羊羊与灰太狼(しーやんやんゆぃーほいたいらん、
ウキウキヒツジと灰色オオカミ)」ですが、
あんな紙芝居をそのまま動画にしたような
単純ストーリーのアニメに、
目が肥えた日本人が飛びつくとは思えません。
また、中国国産ドラマは
毎日テレビで大量に放映されていますが、
日本人に韓流ドラマほどの感動を与えられるか、
というと大いに疑問です。

コンテンツ発展途上国・中国には、
パブリック・ディプロマシーに使えるような
良質なコンテンツがないのです。

中国には日中の相互理解のためにも、
今後ぜひコンテンツ力を磨いて頂き、
日本人が見て楽しみながら、
中国のことが良く理解できるようなコンテンツを
作ってもらえれば、と思います。


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2011年10月19日(水)

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