第1409回
パブリック・ディプロマシーによる国益
先日、中国の高校に通う我が家の長女が、
中国人の同級生と話しているときに、
会話の中に「とある科学のレールガン」という
日本語が出てきたのだそうです。
長女が「なにそれ?」と訊いたところ、同級生から
「日本人なのになんで知らないの?」
と驚かれてしまったのだそうです。
「とある科学の超電磁砲(レールガン)」。
これは恥ずかしながら私も知らなかったため
ネットで調べたところ、日本の「アニメ」の題名でした。
電撃を操るその能力から
「超電磁砲(レールガン)」の通称を持つ
超能力者・御坂美琴が、
学園都市で起こる様々な事件を解決していく、
というストーリーなのだそうです。
私たち日本人が題名さえ聞いたことがない、
失礼ながら比較的マイナーな日本アニメのファンが、
どうして日本から遠く離れたここ中国にいるのか?
それは、優酷(よーくー)や土豆網(とぅどうわん)など、
中国のYou Tubeと言われる動画投稿サイトでは、
日本のアニメがタダで見放題だからです。
こうしたサイトを開くと、
海賊王(はいぜいわん、One Piece)、
新世紀福音戦士(しんしーじーふーいんぢゃんしー、
新世紀エヴァンゲリオン)など、
日本のアニメが中国語字幕付きで
大量にアップロードされています。
こうした著作権を無視した動画投稿サイトの存在により、
日本のアニメ業界が本来中国で得られるはずだった
機会利益の損失は巨額に上ると思われますが、
一方でパブリック・ディプロマシーの観点から考えると、
日本国はその損失を補って余りあるぐらいの
大きな国益を得ているのではないかと思います。
パブリック・ディプロマシー。
これは「国際社会の中で自国の存在感を高め、
自国のイメージを向上させ、
自国についての理解を深めるさせるために、
相手国の政府ではなく、相手国の国民に直接
働きかけていく外交活動のこと」なのだそうです。
原爆を2発も落とされ
日本中を焼け野原にされたにも関わらず、
アメリカに憎しみを抱く日本人が少ないのも、
豊かで自由なアメリカのイメージを大量に送り込んだ
アメリカのパブリック・ディプロマシーの
成果の1つと言われています。
最近では、韓国ドラマ「冬のソナタ」に始まった韓流ブームで、
日本人の韓国に対する感情が劇的に改善し、
多くの日本人が韓流ツアーで韓国に旅行に行くことによって
韓国に大きな経済効果をもたらしたのも、
パブリック・ディプロマシーのおかげと見ることができます。
そういった意味では、日本政府には
外務省の予算にパブリック・ディプロマシー費を計上し、
その予算を使って貧困に喘ぐ日本のアニメ業界を救済し、
パブリック・ディプロマシーに使えるような
より良質なアニメの制作を奨励する、
というような柔軟な発想も必要なのではないかと思います。
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