第1370回
中国政府の金融引き締め政策でヤミ金横行
インフレが止まらない中国経済。
5月のCPI(消費者物価指数)の上昇率は
前年同月比5.5%と2年10カ月ぶりの高さを記録し、
6月には上昇率が更に高まり
6%を超えることが予想されています。
特に5月の食品価格の上昇率は前年同月比11.7%と、
全体の2倍以上のペースで上昇しており、
一般庶民の生活に大きな影響を及ぼしています。
中国政府はこのインフレを退治するために、
利上げや預金準備率の引き上げなどの対策を打ち続け、
インフレの元凶となっている
市中にあふれかえる人民元の回収に
躍起になっていますが、
今、この金融引き締め政策、
とりわけ預金準備率の引き上げが
中国の中小企業の経営に深刻な影響を与えています。
預金準備率とは市中銀行が自行の預金総額のうち、
中央銀行である中国人民銀行に
預け入れを義務付けられている比率なのですが、
中国政府はインフレ退治のために
月1回のペースでこれを引き上げ、
現在では21.5%と過去最高水準に達しています。
この預金準備率の引き上げは、市中の余剰資金を吸収し、
銀行の貸し出しの伸びを抑制する効果が期待できますので、
インフレの沈静化には有効なのですが、
一方で、銀行が少なくなった融資原資を
大口のお得意様である優良国有企業に集中させたり、
逆に信用の劣る中小企業への貸し渋りや貸し剥がしを行い、
事業継続のために本当に資金を必要としている
中小企業に資金が供給されない、
という事態が発生しています。
このため、中国の中小企業は事業継続のために、
やむなく違法な金融業者、
いわゆるヤミ金に手を出し始めているようです。
中国紙・中華工商時報によれば、
長江デルタの江蘇省、浙江省では、
中国政府の金融引き締め政策に伴ってヤミ金の活動が活発化、
手続きが簡単な上、
不動産担保さえ提供すれば容易に融資が得られるため、
中小企業の駆け込みが増えているのだそうです。
浙江省温州市では、ヤミ金融市場の規模が推計で
1,800億元(2兆2,500億円)に達したと見られているそうです。
しかし、ヤミ金の金利は年利48-72%と法外。
原材料コストの上昇、人件費の上昇、人民元高など
経営環境が著しく悪化している中で、
そんな金利を払えるわけもなく、
結局は会社も不動産もその他の財産もひっくるめて、
全てを失ってしまう中小企業経営者が多いようです。
当社は典型的な中国の中小企業ですが、
最初から外国人の個人企業におカネを貸してくれる
酔狂な銀行などないだろうと考えて、
開業以来10年間、ずっと無借金でやってきました。
このため、幸いにも
今回の金融引き締め政策の津波はかぶらずに済んでいますが、
ヤミ金に手を出す社長さんたちの心情を慮ると、
とても他人事とは思えません。
何も悪いことをしたわけでもないのに、
さぞや無念だったことでしょう。
インフレ退治をしなければならない
中国政府の立場はわかります。
しかし、少ないながらも雇用を守り、
社会の片隅で真面目に一生懸命働いている
中小企業の社長さんの人生を無茶苦茶にするようなことは、
あってはならないのではないかと思います。
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