第1369回
「労改」で受刑者に「打金」を強制か?

オンラインゲームの中で無数の敵キャラを倒すという
単純作業を繰り返してポイントを蓄積し、
その貯めたポイントを売って現金を得る
「打金(だーじん)」という職業。

その「打金」を犯罪者を収容する
中国の労働改造農場が受刑者に強制的にやらせ、
お金を稼がせているという疑惑が浮上しました。

英紙ガーディアンが、
黒龍江省の労働改造農場に収容されている
ある受刑者に取材したところによれば、
12時間交替で運営されている300人の「打金」隊は、
1日1人当たり5,000-6,000元(6万2,500円-7万5,000円)を
稼ぎ出すことが義務付けられており、
ノルマを達成できなかった場合は体罰を加えられる、
とのことです。

一方、省内の労働改造所に勤める人物は
「そんなことは聞いたことがない」と反論、
受刑者は外部との連絡を許されていないので、
パソコンを与えてオンラインゲームをさせることなどあり得ない、
と語っているのだそうです。

労働改造所。
通称「労改(らおがい)」。

これは反革命犯や刑事犯の思想を
労働を通じて改造するための強制収容所です。
「労改」と言えば文化大革命時代の
過去の遺物だと思っていたのですが、
今でも、それも当時と同じ呼び方で
残っていることにまずビックリです。

そして受刑者が語る「打金」で稼ぎ出す金額。
これは多分1日ではなく、1ヶ月1人当たり
5,000-6,000元稼ぐ、の間違いだと思いますが、
それにしても300人いれば1ヶ月で
150-180万元(1,875-2,250万円)もの
収入になってしまいます。
これだけ稼げれば、労働改造所の経費を
全てカバーしても十分なおつりが来そうです。

また、受刑者にとっても、
それだけ稼げる「打金」の技術があれば、
出所後も大卒初任給の倍に当たる
月5,000-6,000元の収入を確保できますので、
社会復帰も容易になるのではないかと思います。

英紙は「人権無視の中国は受刑者に強制的に
こんなことをさせてけしからん」という論調ですが、
金額の真偽はともかく、
「打金」を1つの職業と考えれば、
これはこれで懲役刑の対象となるでしょうし、
出所後の社会復帰のための技術習得、
という点でも申し分ありません。

但し、オンラインゲームで敵キャラを倒し続けることでは、
労働を通じての思想の改造をする、という
「労改」本来の目的は達成できないかもしれませんが...。





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2011年7月15日(金)

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