| 第1368回無数の敵キャラを倒す「打金」という職業
 お金はあるが時間がない人が多い先進国。一方で、時間はあるが、お金がない人が多い発展途上国。
 このアンバランスをお金と時間を交換することにより解消するのが、
 国際水平分業の考え方ですが、
 最近ではオンラインゲームの世界でも
 国際水平分業が進んでいるようです。
 今、中国には「打金(だーじん)」という職業があります。これはオンラインゲームの中で、
 時間がいくらでもある中国の人たちが、
 無数の敵キャラを倒すという単純作業を繰り返して
 せっせとポイントを蓄積し、その貯めたポイントを
 時間がない先進国の人たちに売って現金を得る、
 という仕事です。
 人気のリアルタイムRPG(ロールプレイイングゲーム)「魔獣世界」などのオンラインゲームは、ゲームの性質上、
 大量のプレイ時間を経ないとポイントが蓄積していかず、
 ゲームも楽しくならないのだそうです。
 ポイントを他人に移譲することは違法なのですが、
 実際には長時間プレイできないが、
 楽しくゲームをしたい先進国のプレイヤーが、
 1日中敵キャラを倒すという単純作業を続けて
 ポイントを貯めた発展途上国のプレイヤーから
 ポイントを現金で買う、という行為は
 常態化しているのだそうです。
 中国インターネット情報センターによれば、2008年に中国で「打金」によって生み出された取引は
 日本円で1,600億円に上る、とのことです。
 そして、世界の「打金」プレイヤーの80%は中国人で、
 うち10万人は「打金」を本職として、
 これだけで生計を立てているのだそうです。
 世の中には様々な仕事がありますが、オンラインゲームで無数の敵キャラを倒すことが
 仕事になるとは驚きです。
 更に年間1,600億円ものお金が動き、
 10万人もの雇用を生み出している、
 ということになると、
 既に1つの産業になっていると言っても
 過言ではないように思います。
 世の中に需要と供給のアンバランスがあれば、それを是正するビジネスが成り立ちます。
 しかし、このビジネスモデルを見ると、
 どことなく不健全さを感じます。
 また、発展途上国の人たちは、いくら生計を立てるためとは言え、1日中オンラインゲームの中の敵キャラを倒すという単純作業を、
 毎日続けていく人生で果たして良いのかという問題もあります。
 しかし、「では工場で毎日同じ単純作業をしている工員さんと
 どこが違うのか?」と問われれば、
 本質的にはあまり変わらないような気もします。
 この「打金」ビジネスのニュースは私に、仕事とは何なのだろう?、
 ビジネスとは?、お金とは?、人生とは?
 ということを改めて考えさせてくれました。
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