第1357回
「中進国のわな」

先日、ADB(アジア開発銀行)は
2050年のアジア経済の見通しを発表しました。

それによれば、中国などが順調に成長すれば、
2050年にはアジア全体のGDP(国内総生産)は148兆ドルに達し、
世界経済に占める割合は現在の27%から51%と
半分を超えるまでに増加、
「アジアの世紀」が訪れる、と予測しました。

米証券大手・ゴールドマンサックス社が
2007年に発表した2050年の各国のGDP予想によれば、
1位は2位のアメリカを2倍近く引き離して
ダントツの71兆ドルで中国、
3位がアメリカとほぼ同額の38兆ドルでインドです。
2カ国のGDPを足すと109兆ドル。
「アジアの世紀」とは言ってもこの2カ国で
アジア全体の70%以上を占めることになりそうです。

ちなみにゴールドマンサックスの予想では、
2050年の日本のGDPはインドネシアにも抜かれて8位、
中国の1/10以下の7兆ドルに止まると見られています。
この予想、良い意味で裏切りたいものです。

さて「アジアの世紀」の到来を予測したADBですが、
一方で中国、インド、インドネシア、ベトナムなどが
「中進国のわな」に陥って成長が減速し、
所得水準も頭打ちになれば、
2050年のアジア全体のGDPは61兆ドルと
楽観シナリオの半分以下にしかならず、
世界経済に占める割合も32%までしか伸びない、
と警鐘を鳴らしています。

「中進国のわな」とは何か?

「中進国のわな」とは、
低所得国から中所得国に移行し、
安価な労働力を武器に輸出で稼ぐ、
というビジネスモデルが通用しなくなると、
輸出産業はよりコストの低い低所得国に勝てなくなり、
かと言って高い技術力を持ち
高付加価値の製品を生産する高所得国にも勝てず、
中途半端な状態で成長が伸び悩む状況に
陥ることを言うそうです。
過去には南米の中進国がこの「中進国のわな」にはまり、
成長が伸び悩んだのだそうです。

現在、中国はまさに人件費の高騰により、
「世界の工場」の座を、
ラオス、ミャンマー、バングラデシュなどの
低所得国に譲りつつあります。
そして経済成長のエンジンを
輸出と投資から消費に切り替えることにより、
「世界の工場」から「世界のマーケット」への
脱皮を図ろうとしています。

中国は「中進国のわな」にはまることなく、
産業を高付加価値化して経済成長を続けることができるのか。

今後数年間の中国の経済構造改革の成否は、
中国のみならずアジアの未来を左右すると言っても
過言ではない、と私は思います。


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2011年6月17日(金)

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