第1347回
中国政府の「贅沢は敵だ!キャンペーン」
1978年、時の中国の最高実力者・ケ小平氏は、
「国民全員で一緒に貧乏になることはできるが、
一緒に豊かになることはできない」という事実に気付き、
「豊かになれる者から先に豊かになれ」という
「先富論」に基づき、改革開放政策を始めました。
それから33年。
改革開放政策は見事に成功し、
全国で96万人もの「先に富んだ者」を生みました。
しかし、一方で貧富の格差は拡大し、
社会を不安定にする要因にもなっています。
中国の富裕層は日本と同じぐらいの数に達した、と言っても、
中国の人口は日本の10倍ですので、
全人口に占める富裕層の割合は1,000人に1人、
0.1%にもなりません。
中国政府が恐れているのは、
この0.1%に満たない富裕層たちが、
自分が一生かかっても買えないような高級品を
まるで野菜でも買うように簡単に買って
優雅な生活をしているのを、
残りの99.9%以上の一般庶民が見て憤り、
その怒りの矛先がそういう社会を作った
中国政府に向かう、という事態です。
先日、北京市の商業監督当局は、屋外広告に対して
「快楽主義や贅沢志向、外国信仰は容認しない。
貴族趣味の生活様式の奨励も認めない」という
異例の規制を発表しました。
具体的には高級別荘などで使われる「貴族のような」とか、
高級車で使われる「贅沢な」、「至上の」といった言葉が入った
広告コピーが禁止される見込みです。
屋外広告は99.9%の一般庶民の目にも触れますので、
彼らの感情を逆なでしないように、との配慮なのでしょう。
今の中国政府にとっては、社会の安定が保たれるのであれば、
2兆3,000億円の高級品市場など
無くなってしまっても良いのです。
この中国政府の「贅沢は敵だ!キャンペーン」は、
先日ご紹介した重慶の「紅色キャンペーン」同様、
「拝金疲れ」した中国の一般庶民の支持を獲得するために、
中国全土に広がっていくものと思われます。
そうなると中国の富裕層は、
いくらおカネを持っていても派手な消費はしづらくなり、
今後は、中国国内では慎ましやかに暮らすフリをしながら、
一般庶民の目が届かない海外で
「貴族のような」高級別荘で暮らしたり、
「贅沢な」スポーツカーを乗り回したり、
という人が増えてくるかもしれません。
ケ小平氏の「先富論」は
「豊かになれる者から先に豊かになれ」だけではありません。
その後に「そして落伍した者を助けよ」と続きます。
中国政府は氏の教えを忠実に守り、
今後は「豊かになれる者から先に豊かになれ」から
「そして落伍した者を助けよ」の方に、
徐々に軸足を移していくのではないかと思います。
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