第1335回
変わる経済成長の目的
中国政府は今年から始まる
第12次5カ年計画(2011-2015年)で、
GDP(国内総生産)の成長目標を
年平均7%に設定しました。
一方で、中国の労働力人口は
上記5カ年計画の期間中でわずか200万人、
年平均では40万人しか増えません。
経済成長の目的が「雇用を創出すること」であれば、
中国は1%成長でも十分に労働力人口の増加分を吸収する
雇用を生み出せるはずです。
では、中国はどうして年7%もの経済成長を
続ける必要があるのでしょうか?
その大きな理由の1つは、今後は経済成長の目的が
「雇用を創出すること」から
「増加する高齢者を養うこと」に
変わるためなのではないかと思います。
中国の労働力人口は今後、伸び率が大幅に鈍化し、
2017年頃には減少に転じると見られています。
しかし、国連の発表によれば、
総人口に占める労働力人口の「割合」は、
昨年2010年に68.1%でピークを打ち、
2017年を待たずに既に減少に転じています。
これが何を意味するかと言うと、
2017年までは中国の労働力人口は若干ながら増え続けますが、
それを上回る勢いで高齢者が増えており、
今後はより少ない人数で増え続ける高齢者を
養っていかなくてはならない、ということです。
中国人口学会によれば、
中国の60歳以上の高齢者は現在1億6,000万人ですが、
今後、年間800万人のペースで増加して、
2015年には2億人を突破するとのことです。
金融危機のときに温家宝首相が
「8%成長を確保すれば、900万人の雇用を生み出せる」
という話をしていましたが、中国は今後
「7%成長を確保して、新たに増える800万人の高齢者を養う」
ということを毎年続けていかなければならないのでしょう。
今後、中国は労働力人口がほとんど増えないのに、
7%成長を続けて増加する高齢者を養っていかなければなりません。
そのためには、国内の産業を高付加価値化して、
労働力人口1人当たりが稼ぐ金額を上げる必要があります。
今後、中国では強烈な人手不足が発生し、
今まで人海戦術で生産を行っていた工場は機械化され、
人間は機械にはできないもっと付加価値の高い仕事を
することになると思われます。
2009年12月に次期国家主席就任が確実と言われる
習近平氏が訪日した際に、分刻みのスケジュールの中、
唯一の企業訪問先として選んだのが、
トヨタでもパナソニックでもなく、
産業用ロボットを生産する安川電機だったのも、
こうした中国の近未来を見据えてのことだったのでしょう。
そして、中国では今後、
高い付加価値を生み出せる高級人材が大量に必要となります。
今は産業構造の転換が大学数の増加に追いつかず、
大卒者は超就職氷河期の中で大変な思いをしていますが、
今後は産業構造の方が追いついてきて、
大学で学んだ高度な知識が存分に生かせる職場がたくさん生まれ、
高い付加価値を生み出せる大卒者は
引く手あまたになるのではないかと思います。
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