第1334回
中国は何のために経済成長しているのか?
中国は何のために経済成長しているのか?
今までこう訊かれたら、
この問いに対する正しい答えは
「雇用を創出するため」でした。
国連の発表によれば、
2000年に8億3,000万人だった
中国の15-59歳の労働力人口は、
2010年には9億2,200万人と、10年間で9,200万人、
年平均920万人増加してきました。
2009年の金融危機の際に、
中国政府は「保八(ばおぱー)」というスローガンを掲げて
8%成長を死守する政策を展開しましたが、
その際に温家宝首相は
「8%成長を確保すれば、900万人の雇用を生み出せる」
という話をしていました。
当時の中国は8%成長を維持すれば
増加する労働力人口を吸収できますが、
万一、成長率が8%を下回れば、
1%当たり100万人以上の失業者を
生み出すような状況だったのでしょう。
しかし、今年から始まる
第12次5カ年計画(2011-2015年)では、
中国政府はGDP(国内総生産)の成長目標を
年平均7%に設定しています。
金融危機のときにはあれだけ「保八」に必死になっていたのに、
これからの5カ年計画ではあっさりと成長率目標を
年7%に下げたのはなぜなのか?
その理由の1つは労働力人口の伸び率が鈍化して、
大量の雇用を創出する必要が
なくなっていくためであると思われます。
先ほどの国連の発表では、
2015年の中国の労働力人口は9億2,400万人と、
5年間でわずか200万人、年平均では40万人しか増えません。
1979年に始まった一人っ子政策の第1世代は
2015年には既に36歳。
労働力人口に占める一人っ子世代の比率が増えるに従って、
中国の労働力人口の増加は鈍化、
2017年頃からは減少に転じると見られています。
年平均40万人の新規雇用であれば、
年7%成長どころか年1%成長でも
十分に生み出すことができそうです。
今までの中国は、雇用を創出するために
政府のインフラ投資で無理矢理高度経済成長を続けてきました。
しかし、これからの5年間は、
逆に人手不足が深刻となり労働者の賃金が上昇、
これに従って経済成長に占める消費の割合が増大し、
政府に作り出されたのではない、
本当の意味での高度経済成長が始まるのではないか、
と私は考えています。
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