第1317回
「官二代」が象徴する権力の世襲
「富二代(ふーあーるだい)」は
民間企業の財産を受け継いだ子供ですので
法的に問題はないのですが、
問題なのは「官二代(ぐぁんあーるだい)」の存在です。
「官二代」とは政治家や役人の親に便宜を図ってもらって
親と同じ政治家や役人になった子供のことです。
日本でも国会議員だった親から
「ジバン、カンバン、カバン」の
いわゆる「三バン」を引き継いだ
二世議員の存在が問題視されていますが、
日本には選挙がありますから、
いくら「三バン」があっても
有権者が二世議員を落選させることは可能です。
しかし、中国の場合、政治家も役人も
完全にブラックボックスの中で人事が決まりますので、
いとも簡単に権力の世襲が行われることになるのです。
その「官二代」の筆頭格が「太子党(たいずだん)」です。
「太子党」とは中国共産党高級幹部の子弟たちのことで、
2013年に国家主席になることが確実視されている習近平氏も
習仲勲元副首相を父に持つ「太子党」です。
2013年に今まで政権を担当してきた
胡錦濤国家主席率いる「共青団」派から、
「太子党」派への権力の移行が行われ、
2023年までの10年間は「太子党」派が
政権を担当する予定なのですが、
「太子党」派に期待されているのは、
その正統性と人脈により中国共産党党内の
引き締めを行うことであると言われています。
エリート集団である「共青団」派が繰り出す政策は
どれもすばらしいものだったのですが、
それこそ「ジバン、カンバン、カバン」なしで
自らの頭脳だけでのし上がってきた人たちの集団ですので、
地方の叩き上げ共産党幹部が中央の言うことを聞かない、
というようなこともあったようです。
そこを中央が「太子党」派に変わることによって
正統性と人脈で党内を引き締め、
中国共産党最大のリスク要因である
頭の悪い地方幹部の汚職や無茶苦茶な行政を止めさせ、
党を一つにまとめることが期待されているようです。
しかし、対一般庶民で考えた場合、
優秀な頭脳を持っているからエラくなった「共青団」ではなく、
「中国共産党高級幹部の子弟だからエラくなった」
というイメージがある「太子党」が政権を司ることには
大きなリスクがあります。
その辺のリスクは共産党中央も十分に承知しているようで、
中国国内で海外の検索サイトを使って
「太子党」で検索しようとしても結果が表示されませんし、
国内の検索サイトを使うと
違う意味の「太子党」のサイトしか表示されません。
「官二代」や「太子党」などという言葉に代表される
権力の世襲で階級社会が形成されれば、
一般庶民は「いくら努力しても、
コネがなければ就職も出世もできない」と悟り、
チュニジアやエジプトなどアラブの独裁国家のように
そうした体制自体を革命によってひっくり返そうとします。
中国でそうした事態を引き起こさないためには、
中国共産党は全国民に対して「機会の平等」を保証し
「努力すれば誰でも豊かに、幸せになれる」という希望を
抱き続けさせる必要があるのです。
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