第1316回
苦労知らずの「富二代」
我が家の長女は中国の高校に通っているのですが、
十数人で食事に行っても
全員分おごってくれる同級生がいるそうです。
私が「高校生なのになんでそんなにお金を持っているんだ」
と訊いたところ、
「彼は「富二代(ふーあーるだい)」だから」
という答えが返ってきました。
「富二代」。
これは成功して大金持ちになった
民間企業の経営者の子供のことです。
「富二代」は親の跡取りとして、
将来、社長の座に座ることが約束されています。
1966年から10年間続いた
文化大革命というリセット期間が終わり、
1978年に改革開放政策が始まって
個人が民間企業を興せるようになってから33年。
今までは創業者が失敗を繰り返して
最終的に成功を勝ち取った
チャイニーズドリームの話が多かったのですが、
これからは生まれたときから家が金持ちで
苦労を知らない「富二代」への財産移行が
行われていく時期に入るようです。
こうした流れの中で、最近中国では、
最初から自分で苦労して働く気がなく、
親のカネをあてにしている若者も増えているそうです。
そうした人たちは
「傍老族(ばんらおずー、すねかじり族)」と呼ばれ、
社会問題となっているようです。
「傍老族」の中には親から金品をゆする人もいるようで、
先日、江蘇省は自活能力のある
成人した子供の経済援助要求を
親が拒否することができることなどを定めた条例を制定、
「省政府が親のすねかじりを禁止する」という
異例の事態に発展しているようです。
「家族以外は絶対に信じない」という人が多い中国で、
民間企業の創業者が苦労して築き上げた財産を
自分の子供に引き継ぎたい、という気持ちを持つことは
非常によく理解できます。
しかし、「富二代」や「傍老族」の話を聞いていると、
中国の親は子供に甘すぎるように感じます。
人の家の子供の教育ですので、
私がとやかく言うような問題ではないのですが、
子供がかわいいので苦労をさせないことが、
結果的に子供の自立を妨げ、
ろくでもない人間に育ててしまっているケースが
多いように思います。
酔っ払い運転をして大学構内で女子学生2人をはね、
「訴えられるものなら訴えてみろ。
僕のパパは李剛だぞ」と言い放って、
昨年の中国ネット流行語大賞に輝いた李剛のバカ息子。
マカオのカジノで15億元(190億円)負けて身上を潰した
「無錫のダイヤモンド王」のバカ息子。
最近、「富二代」の常識はずれのバカさ加減に
あきれるようなニュースが増えてきたように思います。
中国ではまだ二代目への財産移行が
行われようとしている段階ではありますが、
将来、「売り家と唐様で書く三代目」
という事態を招かないようにするためには、
中国の親たちは子供にもっと苦労をさせた方が
良いのではないかと思います。
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