第1292回
中国にスタグフレーション到来か?

昨年の日本の「今年の漢字」は「暑」だったようですが、
中国では「漲(ぢゃん)」でした。

大手ポータルサイト「新浪網」が
出版社などと共同で実施した調査では、
回答者の中で最も多い55.5%の人が
「漲」を「今年の漢字」に選んだのだそうです。
「漲」とは物価の上昇を意味する言葉。
インフレによる物価高が、
いかに多くの国民の生活に影響を与えているか、
ということを物語っています。

このインフレによる物価高を解消するために、
中国政府は預金準備率の引き上げや利上げなど
様々な対策を行いましたが、
結局、昨年11月の消費者物価指数(CPI)は
前年同期比5.1%と2年4ヶ月ぶりに5%を突破、
通年でも年間目標であった3%以下には
収まらなかったと言われています。

2007年のバブルのときのように、
暴走する暴れ牛のような過熱した経済を
沈静化させるのであれば、
何しろ手綱を引きまくって
走る速度をゆっくりさせれば良いのですが、
今回の中国政府のインフレ対策が難しい点は、
中国経済という牛は当時ほど元気が良いわけではなく、
あまり強烈なインフレ対策を講じると、
「角を矯めて牛を殺す」結果になりかねないところです。

実際、最近中国では、
景気が後退しているのにインフレが続く、という
スタグフレーションの到来を危惧する声が上がっています。

中国全国人民代表大会財政経済委員会の
副主任委員で統計学者の賀鏗氏は
「中国は既にスタグフレーションに陥っている」
との見解を発表しています。
また、中国系香港紙・文匯報は
「中国指導部はスタグフレーションの危機を
既に意識している」としています。

景気が悪くなって国民の収入の伸びが止まり、
一方でインフレは続いて物価だけが高くなっていくのであれば、
国民の生活はダブルで苦しくなり、
生活が苦しくなった国民の不満の矛先は
中国共産党の一党独裁体制に向かいます。
こうした事態を避けるためには、
中国政府は、積極財政政策を維持しつつ、
一方では物価安定に力を入れる、という
非常に難しい経済運営を迫られます。

今年の中国政府のCPI上昇率抑制目標は
昨年より1ポイント高い4%。
一方の国内総生産(GDP)伸び率の目標は昨年同様8%。
経済が8%伸びれば、物価が4%上がっても、
差し引き4ポイント分、
国民は豊かになっていく感覚を享受でき、
国内情勢は安定するはずです。

中国政府はスタグフレーションの到来を回避して、
国民に豊かになっていく感覚を与え続けることができるのか。
今年の中国政府の経済政策の舵取りを
注意深く見守っていく必要がありそうです。


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2011年1月17日(月)

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