第1253回
中国政府の不動産価格抑制策が手ぬるいワケ

9月末、中国政府は追加の
不動産価格抑制策を打ち出しました。

それによれば、
1軒目は全ての面積の住宅で頭金比率を30%以上にする、
2軒目は頭金比率を50%以上にするとともに、
ローン金利を基準金利の1.1倍以上にする、
3軒目以降は住宅ローンの貸し付け自体を禁止する、
というものです。

中国政府は過剰流動性による
不動産バブルを沈静化するために、
今年4月、第一弾の不動産価格抑制策を打ち出しました。
この効果は絶大で、規制のターゲットであった
住宅ローンを使って投機をしようとしていた人たちだけでなく、
住宅ローンで自宅を買おうとしていた人や、
全額現金で不動産を買おうとしていた人たちも、
「この規制によって、どこまで不動産価格が下がるか
様子を見よう」と考えて買い控えが始まりました。

この買い控えにより、
6月には中国の不動産価格は2009年2月以来16ヶ月ぶりに、
前月比−0.1%と下落に転じました。

しかし、その後、7月には前月比±0、
8月には+0.7%と再び上昇を始めましたので、
今回、中国政府は追加の不動産価格抑制策を打ち出して、
まだ小さいうちにバブル再燃の芽を摘んでおこう、
としたわけです。

ただ、今回の9月末の不動産価格抑制策は追加と言っても、
内容的には4月の抑制策とほとんど同じものでした。
なぜ、こんな手ぬるいことをするのでしょう。

中国政府が本気で不動産価格を下落させようと思えば、
「不動産税の導入」という最終兵器を使って、
簡単に下落させることができます。
なぜなら、現在の抑制策は
「新規購入者に買いにくくさせる」ための規制ですが、
不動産税はそれに加えて新たな税負担を嫌がる
「既購入者の売りを促す」効果もあるため、
中古住宅市場の需給が大幅に緩む可能性があるからです。

しかし、「不動産税の導入」によって
不動産価格が大幅に下落すると、
今まで値上がりしたら売り抜けることを前提に、
住宅ローンを目いっぱい使って
投機的に不動産を買っていた人たちの
ローンが担保割れを起こして、
借金を返せずに自己破産する人が続出し、
国内情勢が不安定化することも予想されます。
これも中国政府としては避けたい状況です。

今後、中国政府は価格抑制策や
不動産税導入というカードをちらつかせながら、
不動産価格を上昇させもせず、下落させもせず、
高止まりのまま維持する、という
難しい舵取りを迫られているのです。


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2010年10月20日(水)

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