第1240回
事務作業の中国へのアウトソーシング

先日、日本の大手電機メーカー・NECが
自社の人事関連業務のうち、
給与計算や出張旅費精算などの定型的な作業を、
子会社のNEC中国天津オフィスに移すと発表しました。

NEC中国天津オフィスでは先月から
現地社員10人でこの業務を始めており、
1−2年後には50人に増員、
業務の4割を日本から移すとのこと。
これにより運営コストは
日本の半分程度になるのだそうです。

私は2年近く前、
「第956回 日本再生のためのBPO」で、
海野惠一さんが書かれた
「本社も経理も中国へ 
交通費伝票は中国で精算する」(ダイヤモンド社)
という本をご紹介しましたが、
海野さんがおっしゃる事務作業の
中国へのアウトソーシングが
いよいよ本格化しつつあることを感じます。

元々、日本企業の中国へのアウトソーシングは、
工業の世界から始まりました。
日本国内で生産していては
コスト競争力がなくなってしまう製品を、
人件費コストが安い中国の会社に生産委託したり、
自社の工場を中国に作ったりすることで、
日本の工業は空洞化が進みました。

そして今、ようやく
世界的に見ても生産性が低いと言われる
日本のホワイトカラーにも、
その波が迫っています。
毎日50円のランチを食べている、
中国現地法人の日本語を話せる
中国人社員にもできることを、
毎日500円のランチを食べている
日本本社の日本人社員が
やっていてはいけないのです。

では、日本本社の日本人社員が
リストラされないためにはどうすればよいのか?
選択肢は2つ。
1つは明日からランチの値段を50円に落とすこと。
もう1つは明日以降も500円のランチを
食べ続けられるだけの
付加価値の高い仕事をすることです。

こう書くと、事務作業の中国へのアウトソーシングは、
日本のホワイトカラーの仕事を奪う
亡国的な動きに見えてしまうかもしれませんが、
私はむしろ日本のホワイトカラーの意識を
根本から変える良い機会なのではないかと思っています。

500円のランチを食べるに値する
付加価値の高い仕事とは何なのか?
50円のランチを食べる中国人に
マネのできないことは何なのか?

こうした、私がいつも中国ビジネスの現場で
頭を悩ませている課題を、
日本で働くホワイトカラー全員が考えるようになれば、
生産性の低い仕事は外国にアウトソースし、
日本は更に競争力の高い、高付加価値な国に
なることができるのではないでしょうか。


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2010年9月20日(月)

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