第1235回
日本企業の早期退職者を活用する中国企業

早期退職制度。

これは企業が給料の高くなった
中高年の社員をリストラするために、
定年退職を待たずに退職する人を募集する制度であり、
応募した人には退職金を割り増し給付したり、
退職後一定期間給料の何割かを払い続けたり、
という優遇が与えられます。

日本では大企業を中心に、
業績不振に陥った不況業種の企業で
多く採用されているのですが、
今、この早期退職制度を利用して
日本企業を退職した中高年の日本人に、
中国企業の熱いまなざしが向けられているようです。

デパートの三越は、
今年春まで続いた売上の激減を受けて、
昨年末から今年初めにかけて早期退職者を募集、
全従業員の2割強に当たる1,600人が
これに応募して退職したそうですが、
最近そうした退職者に中国の流通企業から
「うちの会社に来ませんか。通訳と車をつけますよ」
という誘いがかかるケースが増えているそうです。

中国では経済成長による国民所得の増大を受けて、
デパートが続々と建設されていますが、
「売れる売場作り」という点では、
日本のデパートの方が一歩も二歩も先を行っています。
中国のデパートは、日本のデパートで
そうした仕事をしてきた早期退職者を雇って、
日本のデパートの売場作りのノウハウを
吸収するのが目的であるようです。

また、先日、上海浦東国際空港と茨城空港を結ぶ
チャーター便を就航させて話題となった、
中国最大のLCC(格安航空会社)・「春秋航空」。
同社の広報責任者は
「日本航空の経営破綻はチャンスだ。
質の高い日本人のパイロットや客室乗務員を
積極的に採用したい」と話し、
今後、早期退職制度で日本航空を退職した
日本人社員の獲得に意欲を見せています。

人材やノウハウはあるが、マーケットがない日本企業。
一方で、マーケットはあるが、人材やノウハウがない中国企業。

日本企業の中では実力を発揮しきれない人材が、
日本企業を退職して
自分を生かしてくれる中国企業に就職する、
というのは、非常に自然な流れではありますが、
このままでは日本の優秀な人材や貴重なノウハウが、
どんどん中国企業に流出してしまいます。

こうした流失を食い止めるためには、
日本企業が「日本のマーケットが縮小しているので、
自社の社員をリストラする」ではなくて、
「マーケットがある中国に出て行って、
自社の社員が活躍できる場を作る」というふうに
発想を根本から転換する必要があるのではないか、
と私は思います。


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2010年9月8日(水)

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