第1230回
中国版国民所得倍増計画
中国政府は先月から、
5年で国民の所得を倍増させる計画などを掲げた
所得格差是正策の草案を地方当局や国有企業の幹部に配り、
意見を求めているのだそうです。
この所得倍増計画は、
地方政府が各々定める最低賃金基準を
5年間で倍に引き上げるなどの手段で実現する予定で、
2011年から始まる第12次5カ年計画に
盛り込む方向とのことです。
5年で倍、ということは、
年間15%ずつ所得が上がる、ということですから、
消費者物価指数(CPI)はもちろん、
現在の経済成長率をも大幅に上回るものすごいペースです。
この計画が実現すれば、
2015年の中国の一人当たりの国内総生産(GDP)は、
現在の4,000ドルから8,000ドルに、
国全体のGDPは日本の倍、米国の2/3ぐらいになります。
更に、この草案の題名が所得格差是正策であったり、
実現の方法が最低賃金の引き上げであったり
することからも予想できるように、
所得の上がり方は全国民一律ではなく、
ブルジョワ階級や中産階級の人たちよりも、
プロレタリア階級の人たちの方が
所得の上がり方が平均値である年間15%よりも
更に大きくなりそうですので、
中国の食品、衣服など一般消費財のマーケットは、
2011年からの5年間で
飛躍的に拡大することが予想されます。
この中国の所得倍増計画、
モデルとなっているのは光栄なことに、
1960年に日本の池田内閣の下で策定された
国民所得倍増計画なのだそうです。
いつも思うのですが、
中国は成功例も失敗例も全て含めて、
実に良く日本の事例を研究しています。
但し、日本の国民所得倍増計画と違うところは、
日本の国民所得倍増計画が
輸出増進による外貨獲得を主要な手段として
国民所得=国民総生産(GNP)を倍増させる、
という方法を採ったのに対し、
中国版国民所得倍増計画は、
先に国民所得を強制的に引き上げることによって
国内消費を喚起して、経済構造を
人件費コストの低さを武器にした輸出主導から
国内消費を主力エンジンとする
内需主導へと転換させようとしているところです。
そして、この計画を打ち出す背景には、
最近、中国各地で相次いでいる
プロレタリア階級の人たちによる
賃上げ要求ストもあるようです。
中国共産党は国民の圧倒的多数を占める
プロレタリア階級の人たちの支持を集め、
国内情勢が安定することによって更に経済が成長し、
プロレタリア階級の人たちの収入が上がって、
中国共産党への支持が更に確固たるものになる、
というポジティブなスパイラルを
描こうとしているように見えます。
中国版国民所得倍増計画。
この計画は、私たち中国でビジネスをする者にとっても、
非常に大きなチャンスです。
所得倍増の5年間は、中国が
地球上に残された最大且つ最後の巨大マーケットとして
全世界の注目を浴びる5年間になるのではないか、
と私は思います。
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