第1229回
上海万博をめぐる日中両国の思惑
今年の5月に始まった上海万博は、
先月末に開催期間6ヶ月の半分、
3ヶ月を経過しました。
一昨年の北京オリンピックのときには、
自分が住んでいる街で開催されている、
ということもあって、かなり盛り上がりましたが、
上海万博は1,500kmも離れたところでやっているせいか、
普段、中国人の友人と話していても話題にも上りません。
それでも上海万博の入場者数は順調に伸びているようで、
7月31日までの累計入場者数は3,490万人に達したそうです。
上海万博は開催前から、
1970年の大阪万博の6,422万人を上回って、
万博史上最多となる7,000万人の入場者数を
目標に掲げていましたが、
折り返し地点でちょうど半分に達した形になります。
上海万博は開幕当初、
入場者数が伸び悩みましたが、
国有企業を対象とした強制動員や、
上海市民への無料チケット配布などで、
ここまで挽回した、と言われています。
私たち日本人から見れば
「そんなことまでして大阪万博を抜きたいですか?」
という感じですが、
入場者が7,000万人を越え、
「万博史上最多」の栄冠を勝ち取り、
これが国威発揚効果を生み出して、
国内情勢が安定するのであれば、
中国政府は例え倫理的に問題があったとしても、
目的のためには手段を選ばないのでしょう。
さて、私は人が多いところと
列に並ぶことが何よりも嫌いですので、
いくらおもしろそうなパビリオンがたくさんあったとしても、
上海万博に行くつもりは全くないのですが、
先日、我が家の長女が
お友達と一緒に上海万博に行ってきました。
上海から帰ってきた彼女の話を聞いたところ、案の定、
一番人気の中国館は入れなかったらしいのですが、
日本館は3時間の行列の末、何とか見学できたとのことです。
彼女の日本館についての感想は
一言で言えば「中国に気を遣いすぎ」というものです。
行列に並んでいるときには、日本館には
「日本の最先端の科学技術を駆使した近未来の生活」
というような展示を期待していたらしいのですが、
実際に入ってみると日本館全体を貫くコンセプトは
遣唐使、トキなどを通じた「日中友好」。
最先端の科学技術という点では、
唯一、バイオリンロボットの演奏が
かなり盛り上がったらしいのですが、
ロボットが弾いた曲は中国の代表的な曲である
「茉莉花(もーりーほあ、ジャスミン)」。
徹底的に中国に気を遣った内容だったそうです。
確かに、2005年の反日デモのトラウマから、
中国に気を遣う日本政府の気持ちはよくわかります。
しかし、私個人的には、万博の日本館ぐらい
日本一色でもよいのではないかと思います。
ただ、「日中友好」のコンセプトは、
中国人の来場者のみなさんにはかなり評判が良いらしく、
日本館の人気は衰えを見せていないようです。
これでたくさんの中国の人たちの
日本に対するイメージが良くなって、
日本に旅行する人が増えたり、
日本製品を買ってくれる人が増えれば、
それはそれで大変良いことであると思います。
そういった意味では、日本政府も中国政府同様、
目的のためには手段を選ばないしたたかさを身に付け始めた、
と言えるのかもしれません。
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