第1142回
30周年の「一人っ子政策」に見直し論

1979年12月に中国が「一人っ子政策」を始めてから、
昨年12月で30年が経ちました。

「一人っ子政策」の第1世代は、
同時期に始まった「改革開放政策」による高度経済成長により
国民がどんどん豊かになったこともあり、
父母と双方の祖父母の合計6つのポケットから、
惜しみなくおカネを注ぎ込まれ、
わがまま放題に育てられたため
「小皇帝(しゃおほぁんでぃー)」と呼ばれてきました。
しかし、「小皇帝」だった彼らももうすぐ30歳、
子を持つ親となる年齢にさしかかっています。

「一人っ子政策」は強烈な人口抑制政策です。
理論上は2人の親から1人の子供しか生まれないわけですから、
世代が1つ下るたびに世代の人口が半分になるはずです。

しかし、実際には罰金を払ってでも第2子を産む人がいることや、
医療水準や衛生環境の改善で寿命が延びたことなどによって
中国の人口は今でも増え続けており、
2030年には15億人まで増えることが予想されています。

ただ、問題はその人口構成です。
現在、中国の60歳以上の人口の割合は
全人口の12%に止まっていますが、
2020年には17%、
2050年には31%まで増加することが予想されています。

一方の日本では65歳以上の人口の割合でも
既に全人口の23%と中国の倍近く、
2025年には30%まで上昇すると予想されていますので、
中国より25年も先に深刻な少子高齢化問題に
直面することになるのですが、
中国の場合人口が多く、
15億人の30%とすると4億5000万人、
日本の総人口の3倍以上の高齢者を
養っていかなければならないわけですから、
中国政府もかなり強烈な危機感を抱いているようです。

昨年11月末、
著名な経済学者であり中国政府のブレーンでもある、
清華大学国情研究センターの胡鞍鋼主任は、
中国紙・経済参考報に
「一人っ子政策は終わりだ」と題する論文を発表、
「一人っ子政策は人口の急増を抑えるという
所期の目的を既に達成しており、
今後は少子高齢化の深刻化を防ぐために
「1夫婦に子供2人」の2世代目の政策を開始すべきだ」
と提言しました。

また、12月には共産党機関紙・人民日報も、
国家人口計画出産委員会の人口問題専門家である田雪原氏の
「新中国の人口政策回顧と展望」と題する論文を掲載、
夫婦の一方が一人っ子の場合、
第2子出産を認めることを提唱しました。
共産党機関紙である人民日報が公然と
現行政策の見直し論を掲載するのは、
極めて異例のことであるようです。

少子高齢化に待ったなしの対応を迫られる中国。
しかし、本当はもっと焦らなければいけないのは、
中国より25年も先に深刻な少子高齢化社会を迎える
日本なのかもしれません。


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2010年2月3日(水)

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