第1059回
「いつかはベンツ」
高級乗用車・メルセデス・ベンツ、
そしてBMW。
この2つの高級車ブランドは中国でも人気が高く、
高度経済成長期の日本で流行った
「いつかはクラウン」というコピー同様、
「いつかはベンツ」、「いつかはBMW」という
一般庶民のあこがれの存在になっています。
ところが、最近、北京の街でやたらと
ベンツやBMWの車を見かけるようになりました。
北京の人たちにとっては金融危機の不景気など
関係ないのか、とも思いましたが、
これはどうも中国国産のベンツ、BMWが
普及してきていることに原因がありそうです。
以前の中国ではベンツ、BMWは全て輸入車で、
関税も中国のWTO加盟前は100%以上でしたので、
これらの高級車に乗っている、ということは、
正真正銘のお金持ちであることを意味していました。
しかし、今ではベンツは北京汽車との合弁で
北京奔馳(べいじんべんちー)を、
BMWはブリリアンスチャイナとの合弁で
華晨宝馬(ほあぢぇんばおまー)を立ち上げ、
それぞれ北京と瀋陽で
国産のベンツとBMWを作り始めているため、
北京でもこの2社の車を多く見かけるようになってきた、
ということのようです。
ただ、この2社の車、国産だからと言って
決して安いわけではありません。
北京奔馳の中型セダン、E280は62万元(868万円)、
同じく華晨宝馬の525Liは56万元(784万円)と、
WTO加盟後に25%まで下がった関税を考慮しても、
輸入車とあまり変わらない値段設定になっています。
そう言った意味では、
金融危機の不景気の最中でも、
おカネを持っている人は持っている、
ということが言えそうです。
「いつかはベンツ」、「いつかはBMW」と思っているのは、
一般庶民だけではなく政府の役人も同様のようです。
今、中国では中国政府が発表した公用車の調達リストに、
今年初めてベンツとBMWが入ったことにより、
インターネット上では「贅沢だ」との批判が相次いでいます。
中国政府は
「BMWは多くの国で警察車両として採用されているし、
価格も大臣、省長クラスは45万元(630万円)、
副大臣、副省長クラスは35万元(490万円)以下という
規定に収まる車種がある」と説明していますが、
「網民(わんみん、ネット市民)」の理解は得られず、
大手ポータルサイト・新浪(しんらん)には数時間で
1万件以上の批判の書き込みが殺到したそうです。
中国政府の役人ならば「紅旗(ほんちー)」などの
純国産の車に乗るべきだと思うのですが共産党員も人の子、
「いつかはベンツ」、「いつかはBMW」という長年の夢は
簡単には捨てきれなかったようです。
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