第1057回
中国の富裕層マーケティング

ルパート・フーゲワーフ。
中国名・胡潤(ふーるん)。

同氏は上海在住のイギリス人会計士で、
中国の富豪の資産を毎年独自に調査、発表しています。
中国でマーケティングをしている人なら
知らない人はいない、という人物です。

そのフーゲワーフ氏が先日、
2009年版の「胡潤財富報告」を発表しました。
この報告によれば、中国には
保有資産1000万元(1億4000万円)以上の富裕層が
82万5000人いるのだそうです。

これらの人たちの平均年齢は39歳。
職業は1.起業家、2.大型企業の幹部、
3.不動産投資家、4.株式投資家の4種類。
地域別では北京市に14万3000人、
広東省に13万7000人、上海市に11万6000人おり、
この3地域だけで全体の48%を占めるのだそうです。

一方の日本には保有資産1億円以上の富裕層が
140-150万人いると言われており、
アジアでトップの座を維持しているのですが、
中国の富裕層の基準を1000万元から
700万元(1億円)まで下げれば、
中国の富裕層の数は、
日本に迫る勢いなのではないでしょうか。

中国の1人当たりのGDPは
昨年ようやく3000ドルを超えたばかりと
日本の1/10以下なのですが、
ことマーケティングに関しては
こうした平均値を過信するとマーケットを見誤ります。
中国は1人当たりのGDPが3000ドルちょっとの国ですが、
30万ドル以上するロールス・ロイスやベントレーなどの高級車が
飛ぶように売れる国でもあるのです。

日本では最近、こうした富裕層の人たちをターゲットとした
「富裕層マーケティング」が注目されているようですが、
中国ではこれだけ富裕層が増えているにも関わらず、
「富裕層マーケティング」というのは
あまり聞いたことがありません。

特に中国では富裕層であることが周囲にバレてしまうと、
いろいろなややこしいカネの亡者たちが寄ってきてしまいます。
このため、中国には本当はおカネをたくさん持っているのに
「何しろ極力目立たないの術」を使っている
富裕層が多いと思われますので、
それが富裕層がどこにいるのか、
その居場所を更に分からなくしているように思います。

中国で高級品のマーケティングをしている人なら誰でも、
フーゲワーフ氏が持っている82万5000人のリストが
喉から手が出るほど欲しいと思います。
そう言った意味では、フーゲワーフ氏が中国の中で一番
「富裕層マーケティング」をやりやすい
ポジションにいると思うのですが、
たぶん彼がそういうビジネスを始めれば、
今まで調査に協力していた富裕層たちは
一斉に協力を拒むことになるのでしょう。

中国では富裕層の居場所を見つけて、
モノやサービスを売り込むことは、
日本よりもずっと難しいのではないでしょうか。


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2009年7月20日(月)

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