第1055回
地震が来なくても倒れるマンション
先日、上海市南西部の閔行区で、
建設中の13階建てマンションが
轟音とともに1階部分から横倒しになり、
作業員1人が死亡する、という事件が起きました。
このマンションは外観はほぼ完成しており、
総戸数629戸の内、
約8割に当たる489戸が既に販売済みでした。
物件は来年2010年の5月に引き渡し予定でしたが、
既に400人近い購入者から
キャンセルの意向が示されているとのことです。
事故の原因は現在調査中とのことですが、
倒れたマンションのすぐ北を流れる川の堤防では事件の前日、
川側に押し出されるような大きな亀裂が確認されており、
更に、マンションの南側では地下駐車場を作るために
地面を深さ4-5メートルまで掘るという
「非科学的」な工事が行われていたという話もあります。
どうも地盤が弱いにも関わらず
十分な対策を取らずに無茶な建設をしたため、
現場の地盤が南側から北側にずれて
マンションの倒壊を招いた模様です。
先日、「北京からの画像だよりNo.343」でご紹介した
北京市郊外の新築マンション販売センターでは、
まだ建設されていない期房(ちーふぁん、先物物件)を
値上がり狙いの人たちが先を争って買っていましたが、
こういうニュースを聞くと
中国で現物を見ていないものを買うことの
恐ろしさを感じます。
しかし、もっと怖いのは
住み始めてからマンションが倒壊することです。
今回亡くなられた作業員の方には大変申し訳ないですが、
被害者が1人だけで済んだのは
マンションがまだ建設中だったからです。
これがマンションが完成して
住民の入居が終わった後に倒壊していたら、
数百人の死者を出す大惨事になっていたものと思われます。
このマンションの開発業者は上海梅都房地産開発。
公開データでは1995年設立の民営企業となっていますが、
事実上、地元鎮政府の支配下にあったという話もあります。
また、6年前にこの会社が競売で取得した用地の価格は
1平米当たり604元(8,500円)と、
同時期に競売にかけられた近隣物件の1/3以下だったそうです。
何となく、鎮政府ぐるみの不正の臭いも漂ってきます。
日本でも2005年にマンションの耐震強度偽装事件が発覚し
日本中のマンションオーナーたちを震撼させましたが、
中国のマンションの中にはこのように
地震が来なくても自分で勝手に倒れるマンションがあります。
この辺の開発業者に対する信用の置けなさが、
13年も北京に住んでいるのに
私が北京でマンションを買わない
大きな理由の1つになっているのです。
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