第1044回
中国という名の虎の尾を踏んだ北朝鮮

核実験をしたり、
ミサイルの発射準備をしたりして
瀬戸際外交を繰り返す北朝鮮。

関係各国は北朝鮮の友好国である中国がその影響力を行使して、
北朝鮮を説得してくれることを期待しています。
また、北朝鮮にしても、
最終的に頼れる外国は中国ぐらいしかありません。
今後、この北朝鮮問題に関しては、
中国の果たす役割は益々重要になっていくものと思われます。

そんな中で北朝鮮は絶対に踏んではいけない
虎の尾を踏んでしまいました。

先日、北朝鮮は中朝国境付近で拘束した
2人のアメリカ人女性記者に
「朝鮮民族敵対罪」と「不法国境出入罪」で、
12年の労働教化刑を言い渡しました。

北朝鮮はいつもの瀬戸際外交の一環として、
アメリカ人にこうした不当に重い判決を下したのだと思いますが、
刑を言い渡された女性記者の1人、
ローラ・リンさんが中国系アメリカ人だったことから、
中国の網民(わんみん、インターネット利用者)たちが、
北朝鮮を強烈に非難し始めました。

中国の大手ポータルサイト・新浪(しんらん)では、
このニュースがアップされてから、
半日で約5000件の書き込みが殺到したそうです。

その大部分が「判決は重すぎで理不尽」と
北朝鮮の措置に反発するものであり、
「アメリカ籍とはいえ私たちの同胞だ。
何もしなければ中国が世界中の笑い者になる」
と中国政府に北朝鮮との交渉を促す意見や、
中には北朝鮮を「狂気の国家」と批判し、
「次に朝鮮戦争が起こった時は、
中国は義勇軍を送って米軍と一緒に戦う」
といった過激な意見もあったようです。

今まではこうした友好国・北朝鮮を批判する書き込みは、
中国当局によってすぐに削除されていましたが、
今回はそのまま放置されているようです。
これは2005年の反日デモの時と同じ対応で、
へたに北朝鮮を擁護する側に立ってしまうと、
批判の矛先が中国政府に向いてしまう可能性が
あるためであると思われます。

中国の外交政策は全て
国内情勢の安定を目的に行われていますので、
民衆が「反北朝鮮」で盛り上がってしまえば、
中国政府は北朝鮮を擁護する行動を取りにくくなります。
そうなれば、北朝鮮は最後の頼み綱を失うことになります。

北朝鮮はアメリカに対する
嫌がらせのつもりだったのかもしれませんが、
尾っぽを踏んでみたらその尾っぽは
怒ると怖い中国という名の虎の尾っぽでした。

今回の件については、
北朝鮮は中国についての理解があまりに足りない
と言われても仕方がないのではないでしょうか。


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2009年6月19日(金)

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