第1043回
中国で民主化運動が盛り上がらないワケ

今年の6月4日は
1989年の天安門事件の発生からちょうど20周年でした。

中国共産党は天安門事件の
「反革命暴乱」という評価を変えず、
あれから20年間の中国共産党主導による
経済発展の成果を強調しました。
「あの時学生たちの言うことを聞いて民主化していたら、
今の豊かな生活はなかったよ」ということです。

一方の民主化勢力は20周年を迎え、
海外亡命組が記念白書を出版したり、
基金を立ち上げたりしましたが、
民主化運動衰退の感は否めません。

本気で民主化運動を進めるならば、
「民主化すれば中国は将来こんなに発展するよ」とか、
「民主化によってみなさんの生活はこんなに良くなるよ」
といった億単位の民衆の心にグッと来るような
メッセージが必要だと思うのですが、
天安門事件から今まで民主化勢力は
「民主化!民主化!」と叫ぶばかりで、
現在の中国共産党一党独裁体制に代わるような
国家が目指す新しいビジョンを示しているのを
聞いたことがありません。

こうしたことが中国で民主化運動が
今一つ盛り上がらない理由なのではないでしょうか。

もちろん、一党独裁体制には
腐敗という最大の欠点があります。
中国共産党一党独裁体制の最大の敵は、
「民主化勢力」でも「ウイグル独立派」でも
「亡命チベット人」でもなく、
他でもない「共産党員」です。
いつまで経ってもいなくならない
腐敗した共産党員を自浄作用で一掃しない限り、
中国共産党に未来はありません。

しかしその一方で、
今回の金融危機への中国政府の対応などを見ていると、
その決定の早さや政策の大胆さは
一党独裁体制ならではであると感じます。
特に、広東省がやろうとしている
不景気を逆手に取った経済構造改革などは
大量の失業者を生む可能性がありますので、
短期的な民意を気にしていたら
とても実行はできないと思われるのですが、
国家の長期的な発展という観点から見れば
必要不可欠な政策です。

一党独裁体制のスピードや
全体的、長期的視野に立った政策を打ち出せる、
という利点を生かしつつ、
腐敗も発生させない、などという
都合の良い政治体制はないものでしょうか。


←前回記事へ

2009年6月17日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ