第1045回
中国はビジネス界のメジャーリーグか?

今から8年前、2001年に私が中国で起業をしたとき、
最初は仕事が全くなく、ゆえに収入も全くなく、
お先真っ暗の状態で精神的に追い詰められながらも、
非常に励みになったのは、
イチロー選手のメジャーリーグでの活躍でした。

イチロー選手は2001年にメジャーリーグ、
シアトル・マリナーズに移籍しました。
それまで日本人選手は8人の投手が
メジャーリーガーになっていましたが、
日本人野手は始めてであり、
イチロー選手がメジャーで通用するのか
疑問視する声も多く出ていました。

しかし、イチロー選手はそんな前評判を吹き飛ばすかのように
1年目から242安打を放ち、
メジャーリーグのルーキー最多安打記録を更新したのでした。

イチロー選手と比べるのはおこがましいですが、
私はビジネス界のメジャーリーグは中国だと思っており、
中国で起業することはビジネス界の
メジャーリーガーになることだと思っていました。

なぜなら、5年半におよぶ丸紅北京支店での駐在経験から、
中国企業がカネを払わないこと、納期を守らないことなど、
日本で働いていたときには予想もできなかったところに
たくさんの落とし穴が掘られており、
中国ビジネスの難易度は日本に比べて
非常に高いことがわかっていたからです。

そして、世界のビジネス界の最高峰、
メジャーリーグである中国ビジネスの世界で通用すれば、
世界中どこの国に行ってもやっていける、と思っていました。

その後、私は案の定、
いろいろな落とし穴に落ちては這い上がり、
落ちては這い上がりを繰り返し、
何とか今までやってきましたが、
その中で気付いたのは
「このメジャーリーグは落とし穴に落ちさえしなければ
案外ちょろい」ということです。

対戦相手の中国企業には独創性がほとんどなく、
何しろ儲かっている人のマネをして、
同じモノやサービスを更に安く供給することばかり考えています。
そして、インターネットを通じて
世界中の情報を入手できるにも関わらず、
海外の先進的なモノやサービス、ビジネスモデルなどを
積極的に取り入れているのもごく一部の人たちだけです。

ビジネス界のメジャーリーグだと思っていた
中国ビジネスの世界ですが、
実はグラウンドの至るところに落とし穴が掘られているために、
アウェイで戦う外国人がそこでプレーをすると
やたらと難易度が高いと感じるだけなのではないでしょうか。
そして、ホームである中国の人たちと同じように
落とし穴をうまく避けられるようになれば、
対戦相手自体は実はマイナーリーグ級なのかもしれません。


←前回記事へ

2009年6月22日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ