第993回
造反共産党幹部の明暗(1)
昨年末、日本では自民党の渡辺喜美議員の
造反が話題になりましたが、
一昔前の中国共産党では、
渡辺議員のように造反でもすれば、
良くて失脚、悪ければ暗殺されてしまうような
怖い雰囲気が漂っていました。
しかし、最近は中国共産党も随分近代化しているようで、
堂々と指導部の方針に反旗を翻す共産党幹部が出てきました。
私は中国共産党というのは党員全員が
全く同じ考えを持っている
気持ちの悪い集団だと思っていたのですが、
党内でもいろいろな意見があることがわかり、
その健全さにある意味ホッとしました。
最近も2人の共産党幹部が造反したのですが、
その造反の理由によって2人の明暗は
はっきりと分かれてしまいました。
まず「明」と出たのは、
広東省のナンバーワン・汪洋(わんやん)党委書記です。
労働集約型の低付加価値製品輸出で発展してきた広東省は、
今回の世界的な金融危機による輸出激減の影響をまともに受け、
輸出に依存する中小企業の倒産が相次ぐなど苦境に陥っています。
そんな中、共産党指導部の温家宝首相は
「中小企業の健全な発展を支援することは、
経済成長の促進、社会の安定維持などに
重要な意義を持つ」として、
中小企業を救済する政策を採るよう広東省に指示をしました。
しかし、汪洋氏は
「倒産するのは全て生産力が立ち遅れた企業なので、
淘汰されて当然だ。こうした困難の中でこそ改革を進め、
産業レベルの向上を図らなくてはならない。
我々は自分の道を行く。他人がどう言おうと構わない」
と公言して、中小企業の救済を拒否、
この危機を利用して広東省の経済構造改革を
進めていく独自の方針を打ち出しました。
汪洋氏の言動は明らかに共産党指導部に対する造反であり、
苦境に陥っている地元企業や、
広東省に進出している企業が多い香港経済界からも
反発の声が出ていますが、
広東省の将来の発展を考えれば、
輸出型低付加価値製造業から内需型高付加価値サービス業への
経済構造の転換は不可欠であり、
広東省を愛するがゆえの発言、と捉えることもできます。
汪洋氏は1955年生まれの53歳。
胡錦涛国家主席と同じ共産主義青年団(共青団)の出身の、
いわゆる第5世代と呼ばれる若手のホープです。
2012年の第18回党大会では、
習近平国家副主席(1953年生まれ)、
李克強副首相(1955年生まれ)と共に
中央の要職に就くと見られています。
この造反発言の後、
「汪洋失脚!」のニュースはありませんので、
同氏の造反は第4世代の現指導部から
「思ったようにやってみろ」とエールを送られたと
見て良いのではないでしょうか。
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