第981回
リストラ農民工の起業ブーム

では、帰郷したリストラ農民工は
故郷でどうやって食べていくのでしょう。

彼らはとりあえず農業に戻ったり、
故郷での再就職先を探したり
することになると思われますが、
元々農業では食っていけないので出稼ぎに出た訳ですし、
景気の減速は中西部地域でも同じですので、
再就職先がそう簡単に見つかるはずもありません。

そこで注目されているのが意外にも起業です。

重慶市では農民工の大量帰郷が始まった昨年11月、
個体工商戸(がーてぃーごんしゃんふー、零細自営業者)
の登録が、前年同月比81%増、
前月比2.4倍の2万8000件以上に上ったそうです。
農業でも食えない、再就職先もない、ということであれば、
自ら起業してしまえ、という大胆な発想です。

こうした動きに対し、
中国政府もリストラ農民工の起業を積極的に支援することを
国務院常務会議で決定しました。

安徽省では1億5000万元(20億円)を投じて、
省内にリストラ農民工の起業基地となる
「農民工起業園」を103ヶ所建設する予定であり、
起業する農民工には融資の利子補助も行うそうです。
また、農民工に対する起業研修プログラムも拡大し、
今年は受講者数を昨年の2.5倍の
5万人に増やす計画だそうです。

日本でも景気の落ち込みに伴い、
「派遣切り難民」が社会問題となっていますが、
最終的には生活保護という
セーフティーネットが用意されています。
しかし、こうしたセーフティーネットが完全ではなく、
政府に頼れない中国のリストラ農民工たちには、
職がなければ一か八か起業する以外に
道は残されていないのです。


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2009年1月23日(金)

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