第918回
瀕死の中国輸出産業

中国の輸出産業に大量倒産の危機が迫っています。

2005年7月の人民元切り上げ前は
1米ドル=8.28元だった人民元のレートは、
現在は1米ドル=6.84元と17%以上高くなっています。
特に、今年に入ってからは人民元高が急速に進み、
半年で7%ほども人民元高になりました。

そこに更に、資金調達コスト上昇、原材料費上昇、
人件費上昇とトリプルパンチが加わり、
付加価値の低い繊維産業などの輸出企業は
経営が成り立たなくなりつつあります。
深セン加工貿易協会の陳永漢会長によれば
「深センの繊維業界では今年に入ってから、
資金調達コストが10-15%、原材料費が10-20%、
人件費が30%それぞれ上昇した」とのことです。

こうした状況を受けて中国政府は7月末、
マクロ経済政策の目標のうち、
「物価上昇抑制」はそのままとしたものの、
「経済過熱の防止」は
「経済の安定的で比較的早い発展の維持」に変更し、
政策を発展重視の方向に軌道修正しました。

具体的には、紡績品や服飾品の輸出税還付率を
11%から13%に引き上げたり、
銀行の融資限度枠を5-10%引き上げたりして、
低付加価値型輸出企業の救済を始めましたが、
企業側のコスト上昇や資金繰りの悪化は
そんなものではとてもカバーできず、
今年に入ってから既に1万社以上の紡績会社が倒産し、
その勢いは止まっていないそうです。

ただ、中国政府の産業政策はもうずいぶん前に、
輸出型から内需型へ、低付加価値型から高付加価値型へと
舵が切られています。
逃げる時間は十分にあったはずです。
にも関わらずいまだに低付加価値型の
輸出産業の仕事をして苦しんでいる人たちは、
知恵がないと言われても仕方がありません。

インフレ退治は国民の不満を
大きくさせないためにも絶対に必要ですが、
そのために金融の引き締めをやりすぎると経済全体が失速し、
「角を矯めて牛を殺す」ような事態を招きかねません。

国内の産業構造を抜本的に変え、
中国経済を角を矯めても死なないぐらい
丈夫で健康にするためには、
逆風が吹いているのにいつまでも同じ仕事をしている
知恵のない人たちを強制的に転業させるなどの、
もっと強烈な政策が必要なのかもしれません。


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2008年9月1日(月)

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