| 第887回「網民」が形成する中国の世論
 中国では最近、インターネット上の書き込みがきっかけとなって、
 社会が動くことが多くなっています。
 家楽福(じゃーるぁふー、カルフール)の不買運動を主導したのもインターネットですし、
 家楽福が四川大地震に多額の義援金を送ったことで
 「みんなで家楽福に買い物に行こう!」という
 180度反対の世論を形成したのもインターネットです。
 更に、ハリウッドスター、シャロン・ストーンが「この大地震はチベット弾圧に対するカルマ(報い)だ」
 と発言したことに対して、
 同氏が一部商品のモデルをしている
 クリスチャン・ディオールの不買運動を起こし、
 同氏が中国で一切の仕事ができないところまで
 追い込んだのもインターネットです。
 中国ではインターネットの利用者のことを網(ネット)に住んでいる民ということで
 「網民(わんみん)」と呼びます。
 中国の「網民」は昨年末の時点で
 2億1000万人に達していると言われています。
 その多くが都市部の若年層であると思われますが、今の中国では全人口の15%強を占める
 この「網民」が世論を形成し、
 不買運動などによって85%の「非網民」を先導する、
 という構図ができつつあります。
 インターネット上の書き込みは匿名ですので、「便所の落書きと同じ」という人もいます。
 確かに、匿名であることを良いことに、
 実名を出してはとても言えないような、
 とんでもない誹謗中傷の書き込みが
 たくさんあることも事実です。
 しかし、面白いことに、たくさんの人の批判が集中する、いわゆる「炎上」状態になる場合は、
 非常に真っ当な「正義感」や「倫理観」が
 働いていることも事実です。
 真っ当な意見だからこそ、世論が形成され、
 社会が動くまでに発展するのです。
 私はこうした状況が更に進むことを最も恐れているのは、他ならぬ中国共産党ではないかと思います。
 今回の四川大地震でも、政府の対応の遅れを批判するような書き込みは、
 政府によってどんどん削除されている、と聞きますが、
 裏を返せば、政府はインターネット上で「炎上」の対象となり、
 中国全土に反政府の世論が形成されることを
 最も恐れているのです。
 「人民日報」でプロパガンダができる時代は終わりました。中国共産党は反政府的な書き込みを削除するヒマがあったら、
 「網民」に「炎上」の対象にされない正しい政治を行うことに
 全精力を傾けるべきなのではないか、と私は思います。
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