第886回
義援金で「炎上」した企業
家楽福や日本企業が
四川大地震の被災者への義援金を奮発して株を上げた一方で、
株を下げそうになった企業もあります。
その1社が電子商取引サイトを運営するアリババです。
同社の創業者でCEOである馬雲氏が
「1元(15円)しか寄付していない」
といううわさがインターネット上に流れ、
「大儲けしているくせにひどい」、
「中国の大富豪はチャリティーには興味がないのか」
というような批判の書き込みが相次ぎました。
しかし、後日、これは2年前、同氏が取材を受けた時に
「不必要な寄付は1元でいい」と答えたことが元になっており、
今回の地震に対しては会社としての義援金と
集めた募金で5000万元(7億5000万円)、
馬雲氏個人も100万元(1500万円)を
寄付していたことがわかりました。
もう1社は大手不動産デベロッパーの万科集団です。
同社の董事長(会長)である王石氏が自らのブログで
「従業員のみなさんは、今回の地震に対する義援金の寄付は
10元(150円)で結構だ」と書いたことから、
同氏にもインターネット上で批判が集中しました。
しかし、これも後日、同社の1万8000人の従業員の多くが
農村から都会に出稼ぎに出てきた貧しい農民工で、
王石董事長はそうした従業員の生活を気遣って
「無理をして寄付をすることはない」という意味で
ブログを書いていたことが判明しました。
同社は会社として220万元(3300万円)を寄付、
更に非営利目的の復興作業に1億元(15億円)の投資を
計画しているそうです。
幸い、両社とも、インターネット上で流れたうわさが
誤解に基づいたものであることが後から判明し、
アリババ(1688)も万科企業(200002)も
上場している本当の株を大きく下げるには至りませんでした。
しかし、今回のことでわかったのは、
インターネット上の匿名の書き込みにより、
それが事実に基づいていようが誤解であろうが、
企業のうわさが瞬く間に中国全土に広がって、
へたをすると企業の業績や株価に
大きな影響を及ぼす可能性がある、ということです。
日本でもインターネット上の書き込みによる批判の集中、
いわゆる「炎上」から、企業が公式謝罪に追い込まれる、
という事態が多く発生しているようですが、
中国でも同様のことが起こり始めています。
中国でも企業はインターネット上の
自社に関する書き込みを常に注意深くチェックし、
誤解に基づくものがあれば「炎上」して
手が付けられなくなる前にその誤解を解く、
という作業をしなければいけない時代に入っているのです。
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