第651回
中国3,000年のわいろの歴史
通達を無視して農地の収用を続ける
一部の地方政府に業を煮やした中央政府は、
今年8月、国土資源部に「国家土地督察弁公室」を設置、
全国9都市に下部機関を置いて、
地方政府による違法な土地取引に対する監視を強化しました。
同部が昨年実施した全国16都市の調査では、
新規建設用地面積の60%が
違法な手段で取得されていた、とのことです。
さらに、温家宝首相は国務院常務会議の席上で、
8月には内モンゴル自治区の発電所違法建設で区主席を処分、
9月には河南省鄭州市の土地の違法収用で、
省の政法委員会書記と鄭州市の党委書記を
警告処分にしています。
こうした地方の暴走の背景には、汚職もあるのですが、
発展が遅れる地方の焦りもあるようです。
地方の共産党幹部は、自分の地方の発展のみを考えて、
土地の開発に邁進しますが、
中央政府はそれによって農地を奪われた
農民の暴動で治安が乱れたり、
全国で大規模な開発がたくさん行われることによって
不動産市場が異常に過熱することを心配しているのです。
そして、こうした中央と地方の利害が食い違う場合に、
中央を説得するために置かれているのが、
地方政府の北京駐在事務所です。
北京に住んでいると、こうした地方の
北京駐在事務所をそこここで見かけます。
まず、各省や自治区の政府は、
どこも必ずホテルやレストランを併設した、
大規模な事務所を北京に持っています。
北京の「江蘇大厦」とか、「福建大厦」とか、
省の名前の付いた立派なビルは、
だいたい省の北京駐在事務所のビルなのです。
そして、市レベルでは約520、
県レベルだと5,000以上の地方政府が、
北京駐在事務所を持っているそうです。
こうした地方政府の北京駐在事務所は、
中央とのパイプ構築のために、
年間200億元(3,000億円)の
「灰色経費(ほいさーじんふぇい、
用途が怪しい経費)」を使っているそうです。
しかし、中央の役人の首を縦に振らせれば、
その何十倍、何百倍という利益が
その地方に流れ込むわけですから、
「灰色経費」はいつまで経っても、
なくなることはないのです。
先日、中国陝西省で出土した周代の酒器から、
役人への贈賄を記した銘文が見つかったそうです。
専門家が解読したところ
「ある貴族が私的な荘園開発と奴隷所有を告発され、
中央の司法当局が調査団を派遣。
罪に問われることを恐れた貴族は、
調査責任者の父母に高価な贈り物を贈った。
責任者はこれに免じて貴族を免責とし、
自らも贈り物を受け取った」
と書いてあったそうです。
3,000年前の周代に行われていたことは、
現代の共産党中国で行われていることと、
ほとんど変わりません。
中国3,000年のわいろの歴史は、
そう簡単には塗り替えられない、
ということでしょうか。
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