第650回
地方幹部の「一国一城の主」意識

最近日本では、福島県、和歌山県、宮崎県と、
地方の官製談合事件が次々と発覚しています。
県の公共事業の入札の際に、
知事が「天の声」と称される受注建設業者の指名を行い、
その見返りとして金品を受け取ったり、
選挙の時に集票で協力してもらったりする、
という構図です。

一部では、知事の「一国一城の主」意識が、
こうした官製談合につながっているのではないか、
と言われています。

江戸時代、各地の殿様は「国主」と呼ばれ、
日本国内にありながら、事実上、
その「国」を支配していました。
民主主義の世の中になった今でも、
一部の知事は、自分がその県を支配する
「殿様」になったような気分で、
職権を濫用しているのではないか、という見方です。

狭い日本でもこんなですから、
広い中国では言わずもがなです。
中国では田舎に行けば行くほど、
共産党幹部の職権濫用はひどくなるようです。
農村では役場で証明書一つ取るのでも、
鎮や村の幹部を接待して、金品をプレゼントしないと、
発行してもらえない、なんて話も聞きます。

ま、証明書を取るための
接待や金品なんてかわいいものですが、
今、中国で問題となっているのは土地がらみの汚職です。
こうした不正な手段を通じて流出している土地取引の収益は、
全国で年間100億元(1,500億円)に達すると言われています。

彼らの手口は、まず、地元政府の共産党幹部が職権で
農民から不当に安い値段で農地を収用し立ち退かせます。
そして、共産党幹部は息のかかった特定の開発業者に
高値で開発区などの開発案件を発注し、
開発業者をボロ儲けさせ、
その見返りとして巨額のわいろを受け取る、
というものです。

農地を取り上げられてしまった農民たちは、
生きていく術がありませんので、暴動を起こしたり、
命がけで北京まで来て陳情を繰り返したりしています。

こうした事態を重く見た中央政府は、
一部の地方政府に対して、
違法な土地収用を止めるよう通達を出しているのですが、
日本の一部の知事のみなさんと同じく、
自分を「一国一城の主」だと思っている地方の共産党幹部は、
「オレの国のことは王であるオレが決める」と言わんばかりに、
中央政府の意向を無視して、土地の収用を続けているのです。


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2006年12月18日(月)

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