第560回
1米ドル=7人民元台に突入!

先週15日(月)、人民元の対米ドルレートが、
とうとう1米ドル=8人民元をきって、
7人民元台に突入しました。

思い起こせば、昨年7月、
中国人民銀行は人民元の対米ドルレートを、
従来の1米ドル=8.28人民元から、
1米ドル=8.11人民元に切り上げました。
率にして2.1%の切り上げです。

2.1%と小幅ながら
衝撃的な人民元の切り上げの陰に隠れて、
あまり大々的に報道されることはなかったのですが、
切り上げと同時に、人民元の対米ドルレートは、
従来の固定レートから、
1営業日0.3%の範囲内で変動する、という、
通貨バスケットを参考とした
管理フロート制になりました。

このため、昨年7月の人民元の切り上げ後も、
人民元はじりじりと切り上がり、
約10ヶ月の月日をかけて、今回ようやく、
1米ドル=8人民元をきった、というわけです。

為替市場の心理的な抵抗線であった、
1米ドル=8人民元をきって、
7人民元台に突入した、ということで、
このニュースは日本でも中国でも
大々的に報道されましたが、
昨年7月の切り上げと、
その後じりじり切りあがった分を合わせても、
切り上げ幅はたったの3.4%。
アメリカが要求する
何十%もの切り上げには程遠いレベルです。

この管理フロート制、
1営業日0.3%の範囲内で変動、ということは、
1ヶ月で最大6%前後切り上がる可能性もある、
ということですが、昨年7月から
約10ヶ月で切り上がったのはほんの1.3%。

どうして、これだけしか切り上がらないかというと、
中国人民銀行が毎日のように、
米ドル買い、人民元売りの介入をしているから、
だそうです。
中国の外貨準備高が今年2月に8,536億ドルに達し、
日本を抜いて世界一になったのも、
このドル買い介入が大きく影響している、
と言われています。

これに対し、
アメリカ議会の対中強硬派議員からは、
「中国を為替操作国に認定すべきだ」
という意見が出ていましたが、
アメリカ政府が先日、
議会に提出した「為替報告書」では、
中国の為替操作国認定は見送られました。

スノー財務長官は、公式なコメントでは
「中国が国際収支のバランスを調整するために、
為替レートを恣意的に操作していると
結論付けることはできない」としていますが、
本当は
「中国は寓話「北風と太陽」の旅人と同じで、
風を吹き付ければ吹き付けるほど、
ますますコートを脱がなくなるので、
自分から脱ぐように仕向けたほうが良い」
という判断のようです。

さすが、アメリカ政府。
どこかの国の政府と違ってしたたかです。


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2006年5月22日(月)

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