第561回
ランチと付加価値のカンケイ

アメリカ議会の対中強硬派の議員は、
人民元の切り上げを強硬に主張し、
「もし、今年9月までに
人民元の対米ドルレートが改善しなかった場合、
中国から輸入される全製品に対して
27.5%の報復関税を課す」という
対中制裁法案を出そうとしているそうです。

その背景には、安い中国製品の流入により
アメリカの製造業の会社が倒産したり、
生産拠点が中国に移されたりして、
失業者が増加している、
という事実があります。

しかし、これは、アメリカ政府が
国内産業構造の高付加価値化を怠ってきたツケが、
今になって出てきている、
ということなのではないでしょうか。

私は毎日、オフィスが入っている幸福大厦の
一階の食堂で8元の定食を食べています。
8元と言えば、ちょうど1ドル。
その1ドルランチを食べている私が、
10ドルのランチを食べるアメリカ人と、
同じモノを作って価格競争をしたら、
アメリカ人が私に勝てるわけがありません。

アメリカ人が私に勝つためには、
毎日1ドルのランチを食べるか、
付加価値が10倍のモノを作るかの
どちらかしかありません。
10ドルのランチ食べてる人が、
付加価値の低い仕事をしてたらいけないのです。

これは先進国であり、
物価が高い日本にも言えることです。
「高付加価値品は日本で、低付加価値品は中国で」
という国際分業が可能となれば、
中国の存在は脅威ではなく、チャンスになるのです。

しかし、今、アメリカ人がやろうとしているのは、
ルールを根底から変えて、アメリカでも
低付加価値品を作れるようにすることです。
「8元が1ドルではなくて、10ドルになれば、
そこで初めてアメリカ人と中国人が
フェアな条件で競争ができる」ということです。

アメリカ人が言うこともわからないではないですが、
現状、いくら人民元高にするために中国に圧力をかけても、
人民元の価値が10倍になり、中国人もアメリカ人と同じ、
10ドルのランチを食べるようになることはありえません。
中国人の労働コストが、
アメリカ人より高くなることはないのです。

それならば、アメリカは低付加価値品の国内生産を諦め、
付加価値が10倍の仕事をすることに力を入れる方が、
より合理的だと思うのですが、いかがでしょうか。

ま、アメリカ人が中国に来て、
1ドルのランチ食べながら、
付加価値10倍の仕事をするのが、
ホントは一番儲かるんですけどね...。


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2006年5月24日(水)

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