第559回
優秀な人材は「見つける」ではなく「育てる」

「優秀な人材を確保できるかどうかが、
今後、中国ビジネスの成否を決める」
というのは良くわかった。
では、どうやったらそんな優秀な人材を
見つけることができるのか。

私がお会いした中国人若手経営者の方々によれば、
優秀な人材はそもそも「見つける」ものではなくて、
「育てる」ものだ、とのことです。
もっと言えば、育ちそうな人材を見つけて
「育てる」のだそうです。

優秀な人材、というのは、
労働市場に出てくることはまずありえず、
既にかなり高度なスキルを身に付けて、
どこかの会社で活躍している場合が多い。
そういった人材を引っ張ってくるには、
非常に高い給料を提示しなければならない。
しかし、高い給料に惹かれてやってくる人は、
他の会社がもっと高い給料を提示すれば、
すぐにそちらに行ってしまう可能性が高い。

それならば、給料の多寡ではなく、
自社の経営理念に惹かれて入社してきた
育ちそうな人材を「育てる」方が、
ずっと理にかなっている。
入社した時点では何もできなくても、
潜在能力が高い人材ならば、
業務遂行に必要なスキルは、
すぐに身に付けてしまう。
器に入っているモノを見るのではなくて、
器の大きさを見て採用し、
必要なモノは後から入れていってやれば良い、
という発想です。

この辺、意外にも非常に「日本的」です。
むしろ、昨今、終身雇用、年功序列の雇用体系が崩れ、
「即戦力を採用して使い捨て」という
本場・日本企業の人事政策よりも、
よっぽど「日本的」かもしれません。

ただ、中国企業が「育てる」のは、
あくまでも「士官候補生」のみです。
それ以外の「兵隊」は人材ではなく、
単なる労働力とみなされていますので、
「育てる」こともしなければ、
キャリアパスも用意しません。
そうした「兵隊」を生かさず殺さず働かせるのも、
中国企業における「士官」の重要な役割なのです。

このあからさまな階級差別。
日本の会社でこんなこと言ったら、
大問題になりそうです。

中国企業では、
優秀な人材は「士官」として育てられ、
同じ会社でどんどん昇進していくのですが、
それ以外の「兵隊」は、未来を閉ざされており、
時間を切り売りするしかありませんので、
少しでも高い給料を求めて
ジョブホッピングを重ねるのです。


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2006年5月19日(金)

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