第455回
「優秀な人は独立して個人企業を興す」
中国で中間管理職人材が不足している理由は、
中国の人たちの独立志向にあるのではないかと思います。
店長や課長を任せられるような優秀な人材は、
ちょっと業界の事情がわかって、人脈ができると、
みんなさっさと独立して、
個人企業の社長になってしまうのです。
日本では、「優秀な人は大企業の中で出世していく」
というのが常識ですが、
中国では、「優秀な人は独立して個人企業を興す」
というのが常識です。
それが証拠に、私が丸紅を辞めて、北京で起業した時も、
日本人の友人の反応は「なんでまた...」
というものがほとんどでしたが、
中国人の友人はみんな
「恭喜!恭喜!(おめでとう!おめでとう!)」
と言ってくれました。
この辺の中国の人たちの感覚は、
同じアジアの日本人よりも、
むしろ、アメリカ人に近いものがあります。
日本の会社は優秀な中間管理職が
会社を支えてくれますので、
経営者がボンクラでも会社は回っていきますが、
中間管理職人材が不足している中国の会社では、
社長が何から何まで決めなければなりません。
実際、私の知り合いでも、一緒にいると、
携帯電話に社員からの電話が
ひっきりなしにかかってくる社長がいます。
最初のうちは「バリバリ仕事をこなしていて、
カッコいいなぁ」と思っていたのですが、
よくよく会話の内容を聞いてみると、
「会社の備品を買っていいか」とか、
「明日一日、休みをとっていいか」とか、
そういうどーでもいいような
細かいことばかりなのです。
本来社長は、そんな瑣末な判断は中間管理職に任せて、
自分はもっと、会社全体の行く末を決めるような
重要な経営判断をしていくべきだと思うのですが、
優秀な中間管理職がいない会社は、
細かいことも全て社長が判断するしかないのです。
中間管理職を辞めて会社を飛び出した個人企業の社長は、
こんどは、自分が中間管理職不足に悩むことになるのです。
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