第445回
「中国の人たちにマネのできないもの」

日本人が北京に来て、
「日本にはあるが、北京にはないモノやサービス」
という観点で北京の街を見ていけば、
ビジネスアイデアはいくらでも思いつくはずです。

しかし、「但し、中国の人たちにマネのできないもの」
という条件をつけると、その数は急激に少なくなります。

もちろん、中国の人たちが
マネのできるもので起業してもよいのですが、
ちょっと繁盛するとすぐにマネをされて、
価格競争に巻き込まれてしまう可能性が
非常に高くなります。

何しろ相手は、
月に10,000元(150,000円)も懐に入れば、
「脱サラ起業大成功!」というような人たちです。
こんな人たちと価格競争をして勝てるわけがありません。

やはり、私たち日本人が「中国起業」をする場合には、
「中国の人たちにはマネのできない
付加価値の高いモノやサービスを、
高所得の中国人か
日本人を含む外国人に提供する」
という考え方でいった方が、
リスクも低く、
成功の確率が高いのではないかと思います。

よく、「中国は13億人の巨大市場なので、
1円のものでも、全員に売れば13億円の売上になる」
というようなことを言う人がいますが、
こういうことを言うのは、
きっと中国でビジネスをやったことがない人です。
中国でビジネスをやったことのある人なら、
付加価値の低い、低価格の商品で、
地元企業と価格競争をすることの恐ろしさを、
いやというほど知っているはずです。
私たち外国人は、金持ちに
付加価値も値段も高いものを売るべきなのです。

では、どんなモノやサービスならば、
中国の人たちにマネされないのか。
これは難しい問題です。

モノについては、
いくら技術的なブラックボックスがある製品でも、
1つ買ってきて、分解して研究して、
全く同じものを作る、なんていうのは、
中国の工場にとっては、朝飯前のことです。

サービスに至っては、
一度、お客としてそのお店に行けば、
そのノウハウはすぐに分かりますので、
次の日からでも、すぐ近所に
同じサービスでより低価格の店を
出すことができます。

こう考えてくると、モノもサービスも、
職人技と呼ばれる属人的なものでない限り、
すぐにマネをされてしまうことが分かります。

包丁の入れ方で
刺身の味を変えることができる板前さん。
お客さんの気分やイメージを
髪型として具現化できる美容師さん。
世界最先端の
クリエイティブなデザインを生み出すデザイナーさん。
NASAがスペースシャトルの部品を発注するぐらい
高度な加工技術を持つ町工場のおやじさん。

こうした職人技に対する需要が
中国で大きくなってくれば、
いくら繁盛しても中国の人たちにマネされることなく、
高い付加価値を保って、
大きな利益を確保し続けることが
できるのではないでしょうか。


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