第446回
「地道にコツコツと」

ただ、世の中、そうした職人技を
持っている人ばかりではありません。

私のようにずっとサラリーマンをやっていて、
「脱サラ中国起業」をしよう、なんていう人は、
手に職がない場合がほとんどです。

そういう職人技を持たない日本人には、
中国で会社を興す、なんてことはできないか、
というと、そんなことはないと私は思います。

日本人特有の「生真面目さ」、「完璧主義」、「サービス精神」。
高度経済成長期に日本では何が売れてきたのか知っていること。
日本の便利で快適な環境で育ってきたこと、
日本で既に成功を収めた
ユニークなビジネスモデルを知っていること。

こんな日本人ならあたりまえに持っている性質や知識は、
日本ではさほど役には立ちませんが、
中国に来れば、それらは非常に高い
付加価値を生み出すことになります。
なぜなら、それらは、
中国の人たちが持っていないものだったり、
知らないことだったりするからです。

計画通り生産して納期を守る工場。
寸分の狂いもない美しい仕上がりの内装。
ウエイトレスが笑顔で応対するレストラン。

これらのものは、競争がなく、
国有企業が「売ってやる」という態度で商売をしていた
以前の中国には、ありえないものでした。

それが、「改革開放政策」で競争原理が導入されたため、
他社との競争に打ち勝つために、中国でも
みんながより良いモノやサービスを、
安く提供できるよう努力をするようになりました。

その結果、以前に比べれば、
中国のモノやサービスの品質は
かなり良くなってきましたが、
一足先に豊かになって、
たいがいのモノやサービスが既に出揃い、
飽和しつつある厳しいマーケットで
しのぎを削っている日本企業に比べれば、
そのレベルはまだまだ
比べものにならないぐらい低いものです。

こうしたレベルの高い日本のモノやサービスを武器に、
中国マーケットに入っていけば、
日本人にもまだまだ勝算はあります。

そしてその方法は「地道にコツコツと」であるべきです。
「地道にコツコツと品質の高いモノやサービスを提供し続けて、
徐々にファンを増やしていく」という、
これもまた日本人独特の商売のやり方は、
「楽して一発ドカンと儲ける」のが好きな中国の人たちには、
また別の意味でマネができないのではないか、と思います。


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