第439回
「中国語」より「生真面目さ」

日本人や日系企業に対して
サービスを提供する会社に限られる
北京での求人に対し、
工場の多い上海周辺や華南地域に行くと、
日本人に対する求人は、
北京に比べてはるかに多くなります。
企業が提示している初任給も、
ざくっと言って、北京の2倍近い額です。

上海周辺や華南地域に工場を作った日本企業は、
日本から工場長を送り込みます。
一般的にそうした方々は、技術には詳しいのですが、
中国語は全く話せません。
そうした工場長の右腕となって、
中国語で中国人管理職の人たちに指示を出して、
工場やラインの管理をしてくれる
日本人の人材を求める企業が多い、という事のようです。

こうした工場やラインの管理をする日本人に
求められる能力は、
「中国語」や「中国での経験」もさる事ながら、
それよりも、やはりこれも日本人が得意とする
「生真面目さ」や「完璧主義」が重要となってきます。
「中国語」や「中国での経験」だけが必要なのであれば、
「日本語を話せる中国人」の方が、ずっと役に立ちます。

計画通り生産して、納期を守る。
中国の人たちが
「没弁法(めいばんふぁー、やむなし)」
の一言で済ませてしまう所を、
何とか知恵を絞って計画や契約を守ろうとする。
こういう生真面目な姿勢は、
世界に誇る事のできる日本人の長所です。

一方で、中国企業との交渉、
中国のお役人とのお付き合いなどは、
優秀な中国人スタッフに任せた方が、
ずっとうまくいきます。
この辺の事で、日本人の出る幕はありません。

破竹の勢いで経済成長を続ける中国と、
閉塞感が重くのしかかる日本。
こうした状況の下、今後、日本で就職せずに、
又は、日本での仕事を辞めて、
中国で就職する日本人が増えていく事が予想されます。

日本人が中国で働く場合、
中国語を一生懸命勉強したり、
中国の事情に詳しくなったりする事は、
それはそれで大切な事ではあるのですが、
中国で働く日本人が生み出す
付加価値の源泉はそんな所にはなく、
むしろ「生真面目さ」、「完璧主義」、「サービス精神」など、
日本人が得意とする分野にある、という事は、
常に意識をする必要があるかと思います。

これは中国人のパートナーと一緒に、
中国で事業を興す場合も、同じ事が言えます。

日本人は日本人の得意とする分野を、
中国人は中国人が得意とする分野をそれぞれ受け持ち、
お互いの足りない所を補い合う事によって、
新たな価値を生み出す、というのが、
日中合作成功の要となるのではないでしょうか。


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