第438回
「中国語がへたな中国人」の価値
当社には現在、社員が10名います。
内、日本人は私を含めて5名です。
「社員の半分が日本人」なんていう会社は、
北京広しと言えども、
なかなか無いのではないでしょうか。
当社にはなぜこんなに日本人がいるのかと言うと、
それはクロネコヤマトの海外引越の
代理店をしているからです。
日本のクロネコヤマトと同等の
質の高い引越サービスを提供する為には、
日本に生まれ育って、日本人の常識を持った
「本物の日本人」がサービスを提供する事が不可欠です。
「日本語が話せる中国人」ではダメなのです。
例えば、玄関の概念。
中国の住宅には日本のような玄関がありません。
中国の住宅は一般的に、家に入ると、
いきなりリビングになっており、
扉の近くの空間でスリッパに履き替えます。
ですから、細かい話、靴とスリッパが
同じ所に置かれる事になります。
これに対して、日本人の意識の中では
玄関の上と下の概念が非常にはっきりと分かれています。
玄関には段差があり、下が靴、上は素足かスリッパ、
と明確に線引きがされています。
こうした概念の差がありますので、
室内で作業をしていた引越作業員が、
上履きを履いたまま扉の外にあるダンボールを取って
家の中に入ってきた場合、
中国の人たちから見れば
「差不多(ちゃーぶどー、大差ない)」なのですが、
日本人の目には、許し難い行為に映ります。
こうした日本人の常識から見て
許し難い行為をさせない様に
作業員を教育すると共に、現場を仕切るのが、
当社の日本人の役割であり、付加価値なのです。
これは、日本人に対してサービスを提供する
他の業界でも同じ事が言えると思います。
中国で働く日本人の付加価値の源泉は、
「中国語が話せる」とか、
「中国の事を良く知っている」とか、
そういう所にあるのではありません。
中国語や中国の事情については、
本場の中国人にかなう訳がありません。
中国では、そんな事よりもむしろ、
「日本人としての常識がある」という事の方が、
ずっと価値があるのです。
逆に、いくら中国語がうまくても、
日本人としての常識がない人は、
中国の労働マーケットでは
「中国語がへたな中国人」ぐらいの
価値しかないのです。
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