第296回
「あんたたち、仕事はどうしたの!」
中国には、代理店契約を申し込んできた、
大手電器メーカーの彼の様に、
本業の他に副業もこなす、超多忙な人もいますが、
その一方で、
昼間からなんにもしていない人もたくさんいます。
前から不思議に思っていたのですが、
北京の街には昼間からなんにもしていない人が多すぎます。
定年退職した老人なら分かるのですが、
いい若いもんが昼間っから道端に座って
ボーっとしていたりします。
デパートも平日の昼間から人がたくさんいます。
デパートで買物をしている人たちの層も、
老若男女、バラエティーに富んでいます。
「あんたたち、仕事はどうしたの!」と、
一人一人捕まえて訊きたい衝動に駆られます。
この人たちはもしかしたら、不労所得を得て、
仕事をしないでも暮らしていける人たちかもしれません。
顔や身なりを見ても、
そんなに金持ちには見えないのですが、
中国のお金持ちは見かけによりませんので、
実はものすごい大金持ちである可能性は否めません。
逆に、会社を下崗(しゃーがん、一時帰休)
させられた人たちかもしれません。
下崗させられた人たちは、
会社から最低限の生活保障はしてもらえますが、
家に居てもやる事がないので、
道端に座ってボーっとしたり、
デパートでウィンドウショッピングをしたりして、
時間を潰している、という事かもしれません。
どちらにしても、これだけの人が
働かなくても餓死しないで生きて行ける、
というのはある意味すごい事です。
中国も豊かになったものです。
中国は社会主義の国ですので、
人民はみんな平等に働いて、平等に報酬を受け取る、
というのが基本でした。
その考え方は農業や労働集約的工業が
基本産業だった時代には機能しましたが、
技術の革新や経済構造の変化により、
より少ない人数でより多くの付加価値を
生み出せる様になってくると、
付加価値の創出にそんなにたくさんの人を必要としなくなり、
人が大量に余ってくる様になってしまいました。
今の中国は、多くの付加価値を生み出せる人が、
働いたり、投資をしたりしてどんどんお金を儲け、
たくさん税金を払い、
その儲けや税金で余った人を養う、
という構図になりつつあります。
昼間から働かないでぶらぶらしている人たちは、
中国社会の高付加価値化の象徴、と言えるかもしれません。
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