第281回
本当の「身内」に頼れない時代

昔は日本もこうした「身内」意識が強かったのではないか、
と思います。
昔の小説を読んでいて、「一族期待の星」とか、
「伯父を頼って上京する」という様な表現が出てくると、
昔の日本には、
今の中国の「身内」意識に似たものがあった事を感じます。

しかし、日本は平和な時期が長く続き、
「身内」で団結しないと命を落す、などという心配もなくなり、
人は1人でも生きて行ける時代になりました。
そして、「身内」意識はどんどん薄れ、
「個人主義」が台頭し、
現在の様な、人と人との関わりが非常に希薄な世の中に
なったのではないか、と思います。

こういう状況になると、家が火事になったり、
ドロボーに入られたり、一家の大黒柱に死なれたりした場合、
助けてくれる人がいなくなってしまいます。
「遺産をめぐって、親族が骨肉の争い」とか、
「生活態度を注意された事に腹を立て、
高校生の息子が母親を殺害」とか、
そういう話を聞くと、親兄弟にしても、
もはや「身内」と呼べる関係にない人たちも
増えている様に思います。

「身内」は外敵から身を守るべき時には、
固く団結するのですが、
一旦平和になってしまうと、
内輪もめを始めるんですね。
アメリカがテロとの戦いを宣言するのも、
中国が国民の反日感情を煽るのも、
全ては外敵を作って、
国内で内輪もめが始まらない様にする為なんだと思います。

さて、「個人主義」が台頭して、
本当の「身内」が頼れなくなった日本では、
保険会社が知らない人同士を集めて、
擬似「身内」のグループを作って、
困っている人を助けています。
困っていない人のお金を集めて、困っている人に渡す、
というのは、正に、中国の「身内」システムと同じです。

今はまだ、人々の「身内」意識が強い中国ですが、
今後、平和な時代が続くと、
アメリカや日本の様に「個人主義」が台頭して、
個人が「身内」に頼れない時代が来るものと思われます。

中国の損害保険や生命保険の業界は、まだ本当の黎明期です。
しかし、これが良い事か、悪い事かは別として、
今後、中国の保険業界は、
本当の「身内」に頼れない時代の到来と共に、
その需要を急速に伸ばしていくのではないかと思うのです。


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