第280回
「身内」は必ず助けてくれる

中国の「身内」は、契約書も掛け金もない、
原始的な保険システムとして機能しているのですが、
保険金の支払いには原資が必要です。
「身内」が全員貧乏人では、自分が困った事態に陥った時に、
「身内」に助けてもらう事が出来ません。

ですから、「身内」にお金持ちがいるかいないかは、
非常に重要な事です。
「身内」がお金持ちになる為には、
どんな努力も惜しみませんし、
ねたんだりする事もありません。
「身内」がお金持ちになればなるほど、
自分の将来も安泰になる訳ですから、
「身内」がどんどんお金持ちになってくれる事は、
大変喜ばしい事なのです。

お金持ちの人も、「身内」が困っている時には、
至極当然の様に財産を吐き出してしまいます。
「身内」が困っている時にお金を出し渋る様な人は、
人間として非常に軽蔑されます。

そういった訳で、「身外」である日本企業には
平気で不払いをかます様な中国企業も、
「身内」とみなしている会社や個人には、
必ずきちんと支払いをします。
自社が困った時に、「身外」の日本企業は
「契約条件にない」などという
杓子定規な理由で見殺しにするでしょうけれど、
「身内」は必ず助けてくれますので、
「身内」に優先的に支払いをするのは当然の事です。

日本企業が中国企業と合弁会社を作ると、
中方企業の総経理が、オーナー企業でもないのに、
自分の権限で勝手に一族郎党や自分の友達を、
合弁会社の要職に据えようとする、
という様な事態がよく起きます。

日本企業は「公私混同も甚だしい!」と憤るのですが、
中国の人たちの「身内」意識からしてみれば、
これは当然の行動です。
契約書という紙切れ1枚でつながっている
「身外」の日本企業なんかより、
血や固いきずなで結ばれている
「身内」の方がよっぽど大切ですし、
自分の将来も益々安泰になる訳ですから...。

日本企業が中国で痛い目に遭っている大部分の事例が、
日本企業が中国企業に「身内」とみなされていない事に
起因している様な気がします。
逆に、彼らに一度「身内」とみなしてもらえば、
今までのトラブルがうそのように、
ビジネスがスムーズに進むのではないでしょうか。

ただ、「身内」になる、という事は、
その中国企業が困った時には、
全財産を投げ打ってでも助ける、という事を意味しますから、
これからは運命共同体になる、という相当な覚悟を持って、
お付き合いをする必要が出てきます。


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