第279回
中国人の「身内」意識
中国の人たちの「身内」意識は、
非常に激しいものがあります。
この場合の「身内」とは、親兄弟や親族はもちろんですが、
友達の中で「身内」と認めた人も入ります。
中国の人たちの「身内」に対する態度と、
「身外」に対する態度は、全く異なります。
「身内」の人が困っていれば、
全財産を投げ打ってでも助けますが、
「身外」の人は、極端な話、
破産しようが、死んでしまおうが、
どうでも良い、という感じです。
これは、中国は政情が不安定な時代が長く続き、
つい最近まで、ちょっと気を抜くと、
身ぐるみはがれたり、殺されたりする様な国でしたので、
「身内」で団結して世の中を渡っていく必要が
あった為ではないかと思います。
人生において、信用出来るのは「身内」だけ、という訳です。
この「身内」意識は、
華僑の商売の仕方にも通じるものがあります。
華僑は異国の地で、現地の人に差別されながら、
何とか生計を立てていかなければなりませんでした。
周りは敵だらけ、という状況下で、
華僑同士団結し、助け合い、商売をしていく必要がありました。
華僑商人の世界は、そんな運命共同体の様な集まりですので、
取引においても契約書など交わさないのですが、
もし、それを良い事に不義理な事などすれば、
一生、華僑の世界から追放されてしまう、と言います。
「身内」とみなされず、
敵だらけの外の世界に放り出される事は、
当時の華僑にとっては「死」を意味したのでしょう。
もちろんいくら「身内」と言っても、普段は当然別財布です。
ただ、「身内」の中に交通事故にあったとか、
病気になったとか、
トラブルに巻き込まれたとかいう人がいたら、
他の「身内」の人たちが全力でその人を助けます。
「身内」の中の誰かが死んで、その家族が路頭に迷っている、
なんていう事態が発生したら、
他の「身内」の人たちがその家族を養います。
中国の「身内」とは、外敵から身を守る為に自然発生した、
契約書も掛け金もない、非常に原始的な暗黙の保険システム、
と言えるかもしれません。
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