第220回
「実は全部本物の肉だよ〜ん」
それでもどうしても鶏肉を食べたい、
というわがままな人には精進料理、という手があります。
北京にも何軒もの精進料理の店があります。
精進料理の店では、
大豆を加工して鶏肉そっくりの食感のものを作り、
それで鶏肉料理を作ります。
この「擬似鶏肉」が非常に良く出来ていますので、
全く肉が入っていない料理とは思えないほどの
満足感を得る事が出来ます。
肉を全く食べないで、食事の満足感を得られる、という意味では、
健康の為に非常に良いですし、ダイエットにも有効です。
この精進料理、インド商人にも有効です。
以前、ベジタリアンのインド商人が北京に来た際に、
中国企業の人たちが精進料理の宴会をセットしてくれました。
中国企業の人たちがインド商人に、
「この料理に使われている肉は、全て大豆から作っていますので、
今日は安心してたくさん食べてください」と言うのですが、
インド商人はかなり戸惑っています。
無理もありません。
次々と運ばれてくる料理は、
見た目、普通の中国料理と何ら変わりがありませんし、
インド人にとって宗教の戒律が如何に重要か、
という事をコミュニストの中国人が
十分に理解しているとは思えません。
ちょっとしたいたずら心でドッキリを仕組まれ、
全て食べ終わった後で、
「実は今日皆さんが食べた肉は、全部本物の肉だよ〜ん」
などと言われ、
今まで自分が何十年もかけて積み上げてきた
宗教的なアイデンティティが、
こんな所でガラガラと音を立てて崩れてしまう、
という可能性も無きにしも非ずです。
実際、中国の人たちは我々外国人に
「とりあえず食べてみなさい」と料理を食べさせて、
食べた後に「実は羊の脳みそだよ〜ん」とか、
「ロバの男性器だよ〜ん」とかいうのをよくやります。
恐る恐る食べ始めるインド商人を、
中国企業の人たちはニコニコしながら見ています。
どうもドッキリではなさそうだ、と思ったインド商人は
どんどん箸を伸ばすようになり、
みんなでたくさん食べて、たくさん飲んでの
楽しい宴会になりました。
肉不足に悩むニッポン。
しかし、この機会に目先を変えて、
大豆で作った「擬似鶏肉」や「擬似牛肉」を普及させれば、
食事の満足感を保ったままで、
健康になったり、ダイエットしたりする事が
可能になるのではないでしょうか。
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