第204回
インド商人と中国商人との板挟み
ただ、インド人と中国人の間に立って、
三国間貿易を取り仕切る事は、大変な苦労を伴います。
私が認識しているインド商人のイメージは、
何しろ「ネゴ(交渉)がきつい」というものです。
交渉成立間近になればなるほど、
厳しい条件や新たな条件を提示してきます。
まるで、こちらの「何とか契約に漕ぎ着けたい」
という心を、見透かされている様です。
その代わり一旦契約を結べば、契約はきっちり守ります。
「守ります」というか、
契約の履行に関しては日本人以上に厳格で、
日本人なら「まぁ、このぐらいはいいですよ」という様な
些細な契約違反でも、
「契約が完全に履行されていないので、
支払いを行う事は出来ない」となってしまいます。
一方の中国商人は、契約書などただの紙切れだと思っています。
いつもお話している様に
「契約書とは合意した時点での状況下における合意内容を
書面にしたものであり、状況が変われば当然、
その内容も変わってしかるべし」なのです。
ですから、たいしたネゴも無く、
あっさりと契約書にハンコをもらって、喜んだもの束の間、
さぁ契約履行、という段階になって
「状況が変わったのでその商品は無くなりました」とか、
「これだけマーケットが上がっているのに、
そんな値段で出荷出来る訳ないでしょう」などという事を、
さも当然、という態度で言い放たれたりします。
中国商人の考え方や常識をインド商人にいくら説明しても、
永久に分かってはもらえません。
「その為に信用出来る日本の商社と契約してるんじゃないですか。
貴社の責任において、必ず契約通りに出荷してください」
と言われるのが落ちです。
それはごもっとも。反論の余地はありません。
お互い、全く異なる常識を持った
インド商人と中国商人との板挟みにあった
日本商社の苦労がいかばかりか、
お察し頂けますでしょうか。
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