第159回
三角債問題
中国は日本とは全く違う原理で動いている国です。
そこに来て、日本のスタンダードを振りかざして
「中国はおかしい」と言うのはいかんと思うのです。
確かに、中国にはおかしい所もあるのですが、
中国ビジネスを進めるに当たっては、
そうした日本と中国の考え方の違いを良く理解し、
それを飲み込みながらちゃんと利益を上げて行く様な、
度量の大きさ、したたかさが求められます。
日本人が中国ビジネスを進めるに当たって、
最大の障害となるのが、商品代金の回収の難しさです。
売上好調、利益も十分、
しかし、売掛金が嵩んで、キャッシュが回らなくなり黒字倒産、
なんて言う事も、
中国に進出している日系企業の間では良く聞く話です。
日本企業同士の取引であれば、契約交渉は厳しくても、
一度契約してしまえば、契約通りお金を払ってくれます。
しかし、中国企業との取引では、契約してからも闘いが続き、
現金を見るまでは安心出来ません。
「そんなにみんな、お金を払わないなら、日系企業だけで無く、
中国企業ももっと倒産してしかるべきじゃないか」
と思われる向きもあるかもしれませんが、
中国企業はなかなか倒産しません。
それは、買掛金をいつまで経っても払わないからです。
そんな事で、中国企業の貸借対照表は、
売掛金と買掛金に巨大な額が計上されており、
それで何とかバランスを保っている、という形になっています。
また、損益計算書は中国においてはほとんど意味を成しません。
会社の存続は損益計算書には表れない、
キャッシュフローの有無にかかっているからです。
こうした巨大な債権と債務のネットワークは
中国全土に広がっています。
これは「三角債問題」と言って、
中国経済がグローバル化するに当たっての
大きな障害と言われています。
A社がB社に払わず、
B社がC社に払わず、
C社がA社に払わないという三角債状態であれば、
3社の債権債務を相殺してしまえばそれで済むのですが、
実際には1,000万社と言われる中国企業が
お互いに複雑な債権債務関係にありますので、
この絡まった糸を解く事は、ほぼ不可能と思われます。
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