第160回
「お願いします。お金払ってください」

しかし、中国企業も闇雲に払わないのではありません。
払わなければならない所には、ちゃんと払っています。
払わなければならない所とは、
共産党幹部の子弟がやっている会社、
友達の会社、
出荷を止められると困る会社などです。

逆に払わなくても支障が起きない会社には、
特に理由が無くても払いません。
国有企業の経理担当者の成績は、
如何に支払いを少なくして、
会社のキャッシュフローを守ったか、
で評価されると聞いています。
我々日本人から見れば、無茶な話です。

我々日本人が今から共産党幹部の子弟になるのは無理ですので、
中国企業にお金を払ってもらう為には、
お友達になるか、
「出荷を止められたくなかったら払え!」と言える様な
強い競争力を持つ商品を開発するか、しかありません。

お友達になるのは比較的容易な方法です。
私の知り合いの日系企業の営業部長さんは、
集金の度に売り先の中国企業の担当者を接待して、
お金を払ってもらっているそうです。
大阪出身の彼は「相手が契約違反してんのに、何で接待して
「お願いします。お金払ってください」言わないかんねん!」
と言いますが、
その程度の出費で巨額に上る商品代金が回収出来れば、
良しとしなければなりません。

しかし、せっかく接待してお友達になっても、
「俺は払いたいんだが、総経理がどうしてもうんと言わない」
と言われたり、担当者が変わってしまったりすると、
どうしようもありません。
やはり、こちらが出荷を止めたら、
お客が困る様な商品を開発する事が、
根本的な解決方法かと思います。

中国で何か物やサービスを売ろうと思ったら、
売れるかどうかの判断に加えて、
代金をちゃんと回収出来るかどうかも考慮しなければなりません。
代金をちゃんと回収出来るかどうかは、
売手市場なのか、買手市場なのか、
代替となる商品はあるのか、
出荷を止めた場合、お客はどの程度困るのか、
などの要素で決まってきます。

その結果、少しでも代金の回収に不安がある場合は、
前金やデポジットで相手を縛る必要があります。
日本で前金やデポジットを要求すると、
「お前、うちを信じてないのか」という様な
感情的な話になりますが、
中国では単なる契約条件の一つですので、
気に入らなければ契約しなければ良い、という、
ただそれだけの話です。

しかし、余程魅力のある商品でなければ、
中国企業は前金やデポジットを打ってくれませんので、
やはり、最終的には
「前金やデポジットを打ってでも欲しい」
と思わせる様な商品を開発する事が重要です。


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