第77回
北京を襲うSARS

ところで、北京はSARS(重症急性呼吸器症候群)で
大変な事になっています。
SARSが香港や広東省で流行しており、
北京は発症者が40人、死亡者は4人しかいない
と報道されていた頃は、割と他人事でした。
北京にいる日本人も、日本の過剰報道を揶揄したり、
香港、広東省のみでなく、北京への出張も延期する日本の本社を
「根性無し」と批判したりしていました。

しかし、4月20日(日)に中国政府の発症者隠しが発覚し、
実は発症者が346人、死亡者が18人と発表され、
衛生相と北京市長が責任を問われ更迭されてからは、
北京の人々の対応はがらりと変わりました。
マスクを着用している人の率が非常に多くなり、
みんなが外出を控えた為、
あれだけ渋滞が激しかった北京市街地の道はガラガラ。
レストランはどこも閑古鳥が鳴いている状態で、
北京全体の人口が少なくなった様な感じです。

北京の日系企業も、
まず、駐在員の家族を日本に帰す会社が多くなり、
駐在員本人も一時的に日本に帰す会社も出てきました。
北京日本人学校の発表では、
先週の時点で約500人いる生徒の1割が
既に日本に帰った、との事でした。

当社でも何しろ
「人がたくさんいる所には近づかない方が賢明」という事で、
昼食もみんなで外食するのは止め、
各自お弁当やカップラーメンを
家から持って来て事務所の中で食べる事にしました。
又、人がたくさんいる所に行く時には、
必ずマスクを着用する事にしました。
マスクが本当にSARS感染防止の役に立つのかどうかは
定かではありませんが、
マスクをしていると何となく心理的に安心です。

毎朝バスで通勤して来ていた当社のスタッフは、
新しい自転車を買い、自転車通勤に切り替えました。
住所を聞くととんでもない郊外に家があり、
事務所まで15kmぐらいの道のりを走って来るのですが、
「誰がいるか分からない満員バスに乗って、
SARSに感染するよりは良い」との事です。

SARSは中国語で「非典型肺炎」。
日常会話や新聞記事では
略して「非典(ふぇいでぃえん)」と呼ばれていますが、
今や、人と会えば話題は「非典」で持ちきり状態の北京です。


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